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社説(12月27日)東アジア文化都市 日程の再検討が必要だ

 静岡県が韓国の全州市、中国の梅州、成都の両市と文化・芸術活動を通じて相互理解を深める1年間の国際交流事業「東アジア文化都市」が、12月末で終了する。県は、18日までに本県で行われた認証事業を966件、来場者数を896万人、経済効果は速報値で232億円とする。
 だが、事業の意義や価値が県民に広く浸透していたとは言いがたい。事業数や来場者数には、中韓3都市との国際交流事業、「静岡国際オペラコンクール」「ふじのくに⇆せかい演劇祭」といった文化・芸術分野の催しのほかに、「浜松まつり」「大道芸ワールドカップ」に代表される観光色が強い既存のイベント、スポーツのイベントも含めている。こうした点が実体の見えにくさにつながったのではないか。
 スポーツや食、観光も広義の「文化」として捉える考え方は、地域ブランドの確立、地域外交の推進に資するのは確かだが、今回は県民の認知度を高めるための時間が足りなかった。その要因は、主催に名を連ねる文化庁にある。
 今回の本県開催は2022年8月に正式決定された。スケジュールに、そもそも無理があった。国際交流イベントの準備期間が半年未満では、開催地の負担が大きすぎる上、広報活動もままならない。一方で、今回の中韓3都市は、それぞれ21年末には内定していたという。この「タイムラグ」は看過できない。
 24年の開催都市も、石川県に正式決定したのは23年9月だった。同年7月に同時募集した25年開催都市は決まっていない。24年夏以降の日中韓文化大臣会合で正式決定するという。同じ轍[てつ]を踏むことにならないだろうか。
 「域内の相互理解・連帯感の形成を促進するとともに、東アジアの多様な文化の国際発信力の強化を図る」とした事業目的を達成するためには、相応の準備期間が必要だ。文化庁は開催都市選定の日程を再考してほしい。開催都市への財政支援拡充、文部科学省、経済産業省などによる側面支援態勢の構築も喫緊の課題だろう。
 今回の本県開催は、準備期間は限られた中で成果も多かった。コロナ下で各地の伝統芸能が疲弊する中、文化活動を担う団体の再活性化を後押しした。「伊豆文学祭」(伊豆の国市)や競技カルタの普及企画「しずかるフェスタ」(掛川市)など新規事業が100件以上生まれた。
 22年度策定の第5期県文化振興基本計画に掲げた「文化に関する活動を行う権利を県民一人ひとりが互いに尊重しあう社会の実現」に寄与したと言えるのではないか。県には、こうしたプログラムの継続支援を求めたい。

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