カルガモのひな 炎天下救出作戦 親子10羽、ビル5階から登呂遺跡に 静岡市駿河区、消防隊が出動
静岡市駿河区の静岡新聞社制作センター5階テラスでふ化したとみられ、孤立していたカルガモのひな9羽が22日、静岡市消防局駿河消防署の“アニマルレスキュー”に救出され、親ガモと共に同区の登呂遺跡付近に引っ越した。
カルガモのひながいたのは地上から約20メートルのテラス。20日ごろから親ガモとともに目撃されていた。水辺がなく、直射日光が照りつけるテラスは、カラスも飛来し、ひなにとって危険な場所だった。9羽のひなは大雨後の22日朝には3羽しか確認できず、6羽が行方不明になっていた。
同署隊員は22日午前9時半ごろ3羽を保護した後、残り6羽の捜索を開始。テラスの排水溝などを画像探査装置を使って丹念に調べた。11時ごろ、親ガモが現れると、ひなガモがテラスの壁の中のあちこちで鳴き声を上げ、捜索が進展。そこから1時間ほどで6羽全てを発見し、救出した。
「確保」。正午ごろ、難航した最後の1羽を壁の中からタイルを割って保護した同署隊員が顔をほころばせた。約2時間半にわたるアニマルレスキューを見守った社員も「良かった」と胸をなで下ろした。
その後、9羽のひなは親ガモと一緒に登呂遺跡付近の自然に帰された。
アニマルレスキューは同署の市民対応の一環。救助隊4人と指揮隊3人の計7人が救助に当たった。特別高度救助隊の近藤晋次隊長(40)は「本来は人を助けるのが仕事だが、市民の相談に対応するのも仕事。予想に反した場所にいたが、助けられて良かった。元気でいてくれてうれしい」と笑顔を見せた。
地上20メートル 水辺ない中で発見「大変珍しい」
日本平動物園(静岡市駿河区)の岡村創飼育第一係長(45)によると、カルガモの親子が地上約20メートルの高さで周辺に水辺もない中、発見されるケースは「大変珍しい」という。「親ガモがテラスで産卵して、ふ化したのだろう」と推測する。
カルガモの主なえさは水草やヤゴなどの昆虫で、通常は水辺近くで産卵する。
ふじのくに地球環境史ミュージアム(同区)の西岡佑一郎准教授(37)はカルガモが人の生活圏で生活する点に着目し、「誤って建物に営巣してしまう個体や緊急的に降り立った場所で産卵する個体もいると想像できる」と話した。
静岡市を管轄する県中部農林事務所によると、野生の鳥や動物の保護などの相談は本年度に入って約110件あったという。