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テーマ : 動物・ペット

人間に恋をして産卵(細川博昭/作家)【鳥のいる暮らし⑪】

 人に慣れている飼い鳥の多くは人間とのスキンシップを楽しみにしているが、注意もいる。

筆者と目が合うと飛んできて服の中に潜り込んだオカメインコ。それが刺激となり産卵も
筆者と目が合うと飛んできて服の中に潜り込んだオカメインコ。それが刺激となり産卵も

 鳥の交尾は雄が雌の背に乗って行う。そのため人間をパートナーと認識した雌は、背中を触られたことを交尾の信号と受けとめて無精卵を産んでしまうことがある。ゆえに雌を触る際は、なるべく背に触れないように注意し、頭や首を中心になでるようにする。
 自然の摂理とはいえ、無用な発情が続いて卵を産み続けると鳥の寿命は確実に縮む。それを飼い主は理解しておく必要がある。ただし、心配のあまりケージから出さないのもNG。違うストレスが生じてしまうためだ。
 ならばせめて毎日声をかけようと思う飼い主もいるが、実はここにもわながある。体には全く触れなくても、毎日声をかけられただけで発情してしまう雌もいるからだ。うちのオカメインコの菜摘もそのタイプだった。ちなみに菜摘の名前は、顔を緑色に染めながら大好きな小松菜を食べる姿が由来である。
 うちに来た時、既に3~5歳の成鳥で、人には慣れておらず、先住の2羽の雄にも無関心で安心していたが、迎えた2カ月後にいきなり卵を産んだ。数年、ペットショップで寂しい時間を過ごした彼女。それがふびんで、ケージの近くに行くたびに声をかけていたことが彼女の琴線に触れ、発情を促したのだと悟った。
 頻繁にかけられた声が求愛の信号として脳に届き、そうした刺激だけでも産卵に至る鳥が少なからずいることを、後に鳥を専門とする獣医師の指摘によって知った。
 大切に思っていることは伝わるようにコミュニケーションしつつも、卵を産みたい気持ちにならないよう、絶妙な距離感を保ち続けた20年間だった。
 (作家)

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