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静岡市長選 圧勝の陰に主導権争い【検証 統一地方選前半戦㊤】

 静岡市長選の終盤直前の4日。市中心街に設けた難波喬司氏(66)の事務所に、市議会会派の自民党市議団と公明党市議会、志政会(連合系)の市議が勢ぞろいした。詰めの戦略を練る緊急選対会議。対立候補の地盤となる葵区を主戦場とし「遊説、電話の最終攻勢をかける。駿河、清水を含めた市内の全3区で勝ちきる」と決めた。優勢の状況にも気を緩めず、勝利を確定的にした瞬間だった。

選挙戦で気勢を上げる難波喬司氏の陣営。組織内ではさまざまな思惑が渦巻いた=8日午後、静岡市葵区
選挙戦で気勢を上げる難波喬司氏の陣営。組織内ではさまざまな思惑が渦巻いた=8日午後、静岡市葵区

 ふたを開ければ、難波氏は15万票近くを獲得。得票率は58%と次点の対立候補に25ポイント以上の差をつけた。自民党に籍を置く対立候補を推薦しなかった自民への批判もあり、葵区で若干の追い上げを許したが、思惑通り全3区で勝利を収めた。
 与野党相乗り候補とはいえ、選挙戦を事実上回したのは自民党だった。難波氏の擁立劇を演じた経済界有志の多くが「選挙の素人で、集票力がない」(陣営幹部)と自認。各地に市議を抱え、選挙戦や地域事情に精通した市議会最大会派の自民党市議団を頼らざるを得なかった。
 今回の市長選は、市議会主要会派が主導権争いを活発化させた。第2会派の創生静岡は出馬表明する前の難波氏といち早く接触し、今も近さをアピール。自民寄りの現職とは対立関係にあったが「難波氏とは積極的に情報共有、意見交換したい」と秋波を送る。
 渦中の難波氏は初当選後の取材に、市議会各会派との関わり方について「共産を除く全会派から応援をいただいた。特定の意向に影響を大きく受けることはない」と断言。一方、自身の政策提言で「商工・物流の投資的経費が少なすぎだ」と現市政を批判し、経済界への配慮をうかがわせる。また、若手市議と個別に接触し、一部の市職員とは水面下で情報をやり取りするなど、市政運営の下準備にいそしむ。
 ただ、有権者から絶大な支持を集める市長をもってしても、議会との二元代表制下では予算も人事も独断専行できない。市議会の定数48(欠員1)に対して、自民党市議団は単独過半数に迫る23人の勢力。自民幹部は当選報告に訪れた難波氏を見送った後、「正すべきは正し、譲らないものは譲らない姿勢をきちんと示す」と語気を強めた。
 ある市幹部はため息をつく。「新市長と議会との間で、われわれ職員が板挟みに遭わないか心配だ」。さまざまな風をはらみつつ、難波氏は13日、政令市静岡のかじを取り船出する。  静岡市で12年ぶり、浜松市は16年ぶりにトップの交代が決まった統一地方選前半戦の政令市長選。有権者から圧倒的な支持を集め、勝利した新市長がどう市政運営を担うか。連動して争われた県議選と併せて戦いの舞台裏を検証し、今後の展望を探る。

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