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普天間移設へ新局面 残る遺恨、実現性に懸念 辺野古沖 大浦湾側着工【表層深層】

 日米両政府が進める米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設計画は、合意から約28年を経て新たな局面に入った。政府が10日着工した名護市辺野古沖の大浦湾側には軟弱地盤が広がる。「国内で前例がない」とされる地盤改良工事は難航が予想され、実現性への懸念は根強い。沖縄県内には、自治体の権限を奪う初の代執行の末、工事に踏み切った政府に対する遺恨が残ったままだ。

政府が工事に着手した、沖縄県名護市辺野古沖の大浦湾。湾内では軟弱地盤が見つかっている=10日午後5時23分(共同通信社機から)
政府が工事に着手した、沖縄県名護市辺野古沖の大浦湾。湾内では軟弱地盤が見つかっている=10日午後5時23分(共同通信社機から)
辺野古の新施設を巡る課題
辺野古の新施設を巡る課題
政府が工事に着手した、沖縄県名護市辺野古沖の大浦湾。湾内では軟弱地盤が見つかっている=10日午後5時23分(共同通信社機から)
辺野古の新施設を巡る課題


 「県の考えに何ら理解を示さない状況での着手は甚だ遺憾だ」。移設阻止を公約とする玉城デニー知事は10日、県庁で記者団に憤りをあらわにした。

 ■不意打ち
 政府は、玉城氏が「切り札」としてきた軟弱地盤工事の設計変更を巡る法廷闘争のさなか、周到に準備を進めてきた。
 玉城氏に代わって政府が工事を承認する先月20日の代執行訴訟の判決を前に、関連工事の契約を完了。判決直後には「1月12日にも着工」との日程と確認した。
 関係者によると、共同通信などが独自取材を基に着工日を報道して以降、準備を加速。前倒しでの着手に踏み切った。
 辺野古移設を巡っては、沖縄防衛局は2011年12月、環境影響評価(アセスメント)書類の県庁提出を反対派住民に阻止されるのを防ぐため、未明に搬入した経緯がある。反対派の間では、政府による「不意打ち」として今も語り継がれている。
 埋め立て現場に隣接する米軍キャンプ・シュワブ(名護市など)のゲート前で抗議活動に取り組む70代の女性は「まさかきょう着工するとは思わなかった。住民を欺く政府の体質は変わらないのか」と声を荒らげた。

 ■課題山積
 設計変更の承認申請から約3年半で、ようやく着工にこぎ着けた政府。岸田文雄首相は「工程に従って工事を進めるべく、全力で取り組む」と宣言したが、移設計画には課題が山積している。
 地盤改良には、砂を固めたくい約7万本を海面から70メートルの深さまで打ち込む必要がある。国内で前例のない工事に「何年たってもできない」(玉城氏)との指摘が出る。完成後も定期的な補修が必要とされ、補修費用がかさむことや、安定して運用できるかどうかに懸念が残る。
 さらに、約12年後とされる移設完了まで、普天間の危険性は残されることも課題となる。昨年11月には鹿児島県・屋久島沖で普天間配備のオスプレイと基本的構造が同じ空軍機が墜落したばかりだ。
 飛行場を抱える宜野湾市の松川正則市長は記者団に「工事の間、政府に対して訓練の県外移設を求めていく」と強調した。

 ■県議選
 工事中、設計変更が必要となる新たな問題が見つかれば、工事が再び中断する可能性は否定できない。
 このため政府が注視するのは、6月に任期満了を迎える県議選(定数48)だ。県議会は現在、玉城氏の支持派が過半数を維持する。不支持が多数を占めれば、玉城氏の政治姿勢への批判が強まるのは必至。移設容認派が26年の知事選で勝利する足掛かりになるためだ。
 自民党県議の一人は「移設阻止を掲げる玉城氏の求心力は確実に低下するはずだ。県政奪還へ全力を挙げていく」と力を込めた。

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