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32道府県議会でバッジ無償支給 当選ごと新品 調達費増 静岡県も任期ごと

 47都道府県議会の議員が着けるバッジを巡り、7割近い静岡など32道府県議会が当選ごとに新品を無償支給していることが30日、共同通信の全国調査で分かった。本県など39都道府県は改選時、失職時とも返却が不要と回答。譲渡を禁じるルールがない議会もあり、売却が可能で、議員への利益供与に当たるとの指摘が出ている。調達コストが増加し、1人当たりの費用が1回10万円を超えるケースもある。

香川県議に支給されている14金製の議員バッジ
香川県議に支給されている14金製の議員バッジ

 山梨や石川、佐賀各県議会では昨年、県議らによるバッジの未返却や紛失が相次ぎ判明。税金の使途として有権者の理解が得られるかどうかが問われそうだ。
 任期ごとの無償支給以外は、初当選時のみに渡すケースや、支給ではなく「貸与」とする場合がある。貸与でも改選時、失職時に返却を求めていないと答えた議会は実質的に支給となっている。求めている8議会でも、富山は「期限を設けておらず、未返却の総数は不明」、佐賀は「返却依頼が徹底できていなかった」と回答、形骸化している実態が浮かんだ。
 山形、福井、大阪は初当選時のみ支給か貸与、三重は新人と元職が当選した場合のみ支給とした。福井はその後、コストを下げた上で貸与から任期ごとの支給に改めると決めた。
 譲渡禁止の定めがないと答えた議会は北海道、福岡など7道府県。福岡は1人当たりのバッジ費用が最も高く、県議選のあった昨年で10万5490円に上った。総額は約900万円で、前回選時点からほぼ倍増した。
 1人当たりバッジ費用の全国平均は約2万7600円。衆院1万5400円、参院1万6500円をいずれも上回った。
 18金素材のバッジも多く、材料となる金などの高騰により約8割の議会で費用が増えた。16議会がコスト削減で在り方を見直したと回答。金からの素材変更が目立った。
 任期ごとに貸与している佐賀では、200個超の所在が分からなくなっていると判明。同じく任期ごとの貸与と答えた石川は、返却義務が周知されていなかった。その後、議会は貸与から支給への変更を決めた。
静岡県も任期ごと 見直し求める声  静岡県議会の議員バッジは、任期ごとに議員に交付されている。2023年の県議選の当選者に交付されたバッジは14金製で1個3万9270円。議会事務局によると、19年の前回選では18金製(同2万8620円)だったが、金価格の高騰を受けて素材を変えた。
 バッジには一つずつ番号が振られているため、仮に転売されても元の所有者が特定できるようになっている。ただ、他県では初当選時にのみ交付したり、改選や失職時に返還を求めたりしている議会があるため、「県民に理解が得られるように、本県も見直した方がいいのでは」「経費削減の意味もあるが、議会の姿勢として改めるべきだ」と主張する県議もいる。
 県議会事務局の担当者は「23年に改選して交付したばかりなので、現時点で見直しの具体的な話には至っていない。次回の県議選に向けて今後課題を整理し、改善すべき点があれば検討したい」と話した。
「無駄」と辞退の動き 兵庫や香川県議  議員バッジを巡り、都道府県議の中には当選ごとの無償支給を辞退する動きが出ている。「いくつも必要ない」「無駄の極みだ」として、2期目以降は希望者のみ自費で購入する制度とするよう求めた議員もいる。ただ、議会による主体的な見直しにはほとんどつながっていないのが実情だ。
 無所属の丸尾牧兵庫県議(59)=当選5回=と、国民民主党の山本悟史香川県議(55)=同4回=は、昨年4月の統一地方選で再選された際、新たに支給されるバッジを受け取らなかった。
 兵庫は金を表面に張った銀製(1個1万4300円)、香川は14金製(4万6200円)をそれぞれ当選ごとに支給し、両議会とも返却は不要だ。価格は4年前と比べて兵庫1・7倍、香川1・9倍と急騰した。
 丸尾氏は昨年5月、当選2回以上は実費購入する制度への変更を議長に申し入れた。「バッジはあくまで象徴だ。住民サービス向上を含め、税金の有効な使い道は他にある」と強調するが、実現には至っていない。
 福井県議会のように、14金製で1人7万1500円のバッジについて、次回選から数千円程度の金メッキ製に変更すると決めた例もある。

 議員バッジ 国会議員や地方議員が身分証代わりに着用する。国政では1890年の第1回帝国議会から導入された。正式名称は「議員記章」。現在は衆参両院とも当選後に無償支給されている。衆院は忘れた場合、本会議場や委員室に入れない。都道府県議会は1959年4月以降の選挙を対象に「勲章型は金属で金色」といった様式の全国統一を申し合わせた。実際には素材や大きさ、議会名の刻印の有無がそれぞれ異なる。特権意識を助長しているとして、不要論も根強い。

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