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自民覚悟で「伝家の宝刀」 急転直下の知事不信任案提出

募る反発 主戦論拡大
 半世紀ぶりの知事不信任決議案提出と1票差の否決という電撃的な幕切れとなった県議会6月定例会。最大会派自民改革会議は衝突を繰り返してきた知事への反発から主戦論に火が付き、否決覚悟で伝家の宝刀を抜いた。2年後の知事選に向け「あと一歩の所まで追い詰めた」と勢いづくが、候補者擁立は難航も予想される。

 ◆マグマ
 「県民に対してうそをついている。何らかの決議を出すべきだ」。12日午後の自民会派役員会。給与返上に関する川勝知事の釈明を聞いた幹部は怒りをあらわにした。強硬派のベテラン議員も「不信任案でいくしかないだろう」と発言。これまでマグマのようにたまっていた知事への反発が一気に燃え上がろうとしていた。
 急転直下、自民が提出にこぎ着けた不信任案。だが、当初は複数ある選択肢の一つに過ぎず、実現するとみる議員は少数だった。幹部の一人は「給与未返上問題を政局に利用しているとの批判を受ける可能性がある」と慎重に対応を探った。
 不信任案が可決され、知事が議会の解散を選択すれば、再び県議選になる可能性をはらむ。知事が給与返上に関する条例案を提出する次回9月定例会が勝負どころ―。政局はまだ先と考える議員は多かったとされる。法的拘束力のある不信任決議案か、再び辞職勧告決議案を突き付けるか、はたまた決議文にとどめるのか。会派内の温度差は大きく、意見集約は難航した。
 だが、知事の発言は強硬派を燃え上がらせた。「こんなビッグチャンスはない。自民党として不信任案を出すべきだ」。党県連幹事長経験もあるベテランは議員総会で出席議員を繰り返しあおった。主戦論は次第に拡大。執行部による意見聴取では、今春当選したばかりの1期生からも不信任案提出を求める声が上がった。強硬派議員は既に、不信任案の可決を目指し他会派への多数派工作に動き出していた。

 ◆世論
 世論も不信任案提出を後押しした。議員や県連には「なぜ知事を辞めさせないのか」と厳しい声が相次いでいた。ある議員は「知事に対する風向きは明らかに変わった」と分析し、「否決されたとしても不信任案を出すべきだという判断に傾いた」と話す。
 1票差での否決で川勝県政の継続が決まったが、自民と知事の溝は一段と深まった。増田享大代表は今後も辞職を求めていくかを記者団に問われ、「その姿勢は1ミリも変わらない」と明言した。
 一方、不信任案提出という切り札を使ったことで、会派内には「何度も乱発はできず、打つ手が乏しくなった」との見方もある。2年後の知事選に向けた候補者擁立もこれからだ。中堅は「仮に出直し知事選となっても具体的な候補者はいなかった」と認めつつ、「いつでも戦える状況にするため、擁立作業を急がなければならない」と先を見据えた。

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