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衆院3補選告示 全敗回避へ 首相崖っぷち 野党 裏金前面、議席奪取狙う【表層深層】

 衆院3補欠選挙が16日、スタートした。裏金事件が直撃し、内閣支持率20%台の超低空飛行が続く中、自民党は東京、長崎で不戦敗を強いられた。唯一の公認候補を立てた保守王国・島根も落とせば、選挙の顔には不適格だとして「岸田降ろし」に直結する恐れがある。崖っぷちに立たされる岸田文雄首相は全敗回避を目指す。野党は「裏金問題にノー」を前面に掲げ、議席奪取へしのぎを削る。

衆院3補選を巡る自民党の勝敗と影響※自民は東京15区と長崎3区で、候補擁立を見送り不戦敗
衆院3補選を巡る自民党の勝敗と影響※自民は東京15区と長崎3区で、候補擁立を見送り不戦敗


 「政治の信頼回復に向けた取り組みをしっかり訴えなければならない」。16日夜、官邸。首相は3補選への意気込みを記者団に問われ、そう強調した。21日には応援演説のため島根入りする予定だ。

 分裂のしこり
 自民は保守地盤の島根1区で苦戦している。亡くなった細田博之前衆院議長と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側との接点を巡る問題が尾を引く。細田氏が裏金事件で渦中の清和政策研究会(現安倍派)の会長だったこともあり、選対筋は「細田氏の弔い合戦とは言いにくい」と明かす。
 2019年に保守分裂となった県知事選のしこりも残り、丸山達也知事を担いだ県議勢が「寝てしまい動かない」(関係者)事態が生じた。慌てた首相は3月下旬、重鎮県議に東京都内で極秘裏に会い、支援を求めて頭を下げた。しかし「色よい返事は得られなかった」(党執行部)という。
 党本部には「首相に応援に来てほしくない」との声も届く。内閣支持率が低迷し、党勢の陰りを象徴する存在となった首相。自身が率いた岸田派の秘書集団を現地に派遣して盛り返しに躍起だが、自民幹部は「正直厳しい」と顔を曇らせる。

 勝ち馬探し
 補選の勝敗は政権運営の分水嶺(れい)となる。自民が21年4月、衆院北海道2区と参院長野選挙区の両補選、参院広島選挙区再選挙で全敗。菅義偉首相(当時)が求心力を一気に喪失し、9月の総裁選不出馬に追い込まれたのは記憶に新しい。岸田首相も同じ轍(てつ)は踏みたくないはずだ。独自候補を断念した東京15区では、次善の策として小池百合子都知事が擁立を主導した新人への相乗りをぎりぎりまで模索。「勝ち馬探し」(都連筋)に余念がなかった。
 今年9月の総裁再選を狙う首相の側近は「島根で1勝さえすれば政権浮揚の余地を残せる」と望みを託す。最近、党の特設ホームページに「6月からは経済再生の実感を届けるため定額減税を行う」とアピールし始めたのも「政権運営の主導権は渡さない」(ベテラン)との思惑がにじむ。

 ジレンマ
 対する野党。島根1区を除けば、東京15区と長崎3区で「与党不在」の異例の選挙となった。立憲民主党や日本維新の会など野党候補が競合する中、政治とカネを争点化し、批判票の受け皿になろうとの戦略を描く。
 「裏金問題にノーの答えを出す選挙だ」。立民の泉健太代表は16日、東京15区の街頭に立ち、有権者に呼びかけた。
 立民が3勝できれば、後半国会で政権追及の追い風となる。次期衆院選で「野党候補の一本化に弾みがつく」(小沢一郎衆院議員)との見方も党内にはある。
 ただ劣勢の岸田首相の下で衆院解散・総選挙を迎えたいのも本音。退陣に追い込めば、自民の顔が代わってしまい、一転して野党に不利となるかもしれない。ジレンマを抱える立民幹部は冗談か本気か、こう予測した。「自民の1勝2敗なら、首相も少し元気が出て解散してくれるかもしれないな」

Q&A 補欠選挙 4月と10月に欠員補充  衆院東京15区、島根1区、長崎3区の3補欠選挙が始まりました。
 Q 補欠選挙とは何ですか。
 A 議員の死去や辞職に伴い欠員が生じた場合に、新たな議員を補充するための選挙です。衆院は小選挙区で1人、参院は選挙区で改選数の4分の1超の欠員が出ると対象になります。
 Q 時期は。
 A 公選法で年2回と規定され、前年9月16日~3月15日に欠員が生じれば4月の第4日曜日、3月16日~9月15日ならば10月の第4日曜日が投票日となります。
 Q 特徴は何ですか。
 A 全国一斉ではないので、各党の議席数に大きな変化はありませんが、直近の民意を映し出すため、与野党が総力を挙げて激突する政治決戦となります。
 Q どんな影響が考えられますか。
 A 時の政権が敗北により打撃を受けた例があります。2021年4月の補欠選挙と再選挙では自民党が不戦敗も含め全敗。菅義偉首相は9月の党総裁選出馬を断念せざるを得ませんでした。08年4月には自民候補が負けた後、福田康夫首相が政権運営に苦しみ、9月に退陣しました。

 ◇衆院東京15区補選立候補者(届け出順)
 福永活也 43 弁護士 諸新
 乙武洋匡 48 作家 無新
 吉川里奈 36 看護師 参新
 秋元司 52 元環境副大臣 無元
 金沢結衣 33 元会社員 維新
 根本良輔 29 IT会社経営 諸新
 酒井菜摘 37 元江東区議 立新
 飯山陽 48 大学客員教授 諸新
 須藤元気 46 前参院議員 無新

 ◇衆院島根1区補選立候補者(届け出順)
 錦織功政 55 元財務省職員 自新
 亀井亜紀子 58 党県代表 立元

 ◇衆院長崎3区補選立候補者(届け出順)
 山田勝彦 44 党県副代表 立前
 井上翔一朗 40 学習塾経営 維新

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