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元職が返り咲き 小山町長選 現町政への期待感薄れ【検証 統一地方選後半戦㊦】

 「5千票は取りたかった」。小山町長選が投開票された23日の深夜。歓喜を分かち合った支援者が帰宅し、人影がまばらになった選挙事務所で、開票結果報告書を手にした込山正秀氏(75)は勝者に似つかわしくない厳しい表情を浮かべた。目標の一つとした得票率6割にも届かなかった。

当選確定後に支援者らと握手を交わす込山正秀氏。一方で得票数には厳しい表情も浮かべた=23日午後10時ごろ、小山町菅沼
当選確定後に支援者らと握手を交わす込山正秀氏。一方で得票数には厳しい表情も浮かべた=23日午後10時ごろ、小山町菅沼

 ふるさと納税を巡る国とのあつれきや都市計画税導入の是非が争点だった4年前に460票差の激戦を演じた2人が、今回は立場を入れ替えて臨んだ因縁の戦い。町議選が無投票となったことも影響し、投票率は過去最低の58・16%を記録した。込山氏の得票は4788票で前回より18票減とほぼ同数だったが、池谷晴一氏(73)は1815票減り、勝敗は覆った。込山氏を積極的に選んだわけではなく、池谷氏への期待が薄れた結果との見方が強い。
 両者の主張に4年前と大きな変化はなかった。込山氏は産業拠点整備などの実績を強調し、事業のさらなる推進を主張した。池谷氏はかつての込山氏の町政運営を批判し、復活阻止を訴えた。投票日前日、シャッター街となった商店街を歩く女性は「別にどちらでもいい」と話した。繰り返される選挙戦の光景に冷ややかな町民も多かった。
 前回選との違いは、4年間の池谷町政が評価対象になったことだ。企業誘致推進などを実績とする池谷氏の姿勢は込山路線の踏襲と映り、「独自色が薄い」「また票を投じたくなるような実績がない」と厳しい受け止めが目立った。住所を御殿場市に移したことは親戚からも大きな反発を招いた。組織力に劣る池谷氏は争点を「倫理」と位置付け、4年前と同様に反込山氏の大きなうねりを起こす戦略を描いたが、取り込みきれなかった。
 一方の込山氏は虎視眈々(たんたん)と準備を進めてきた。ワークショップや政治塾、産業拠点などを巡るバスツアーで、町民との距離を縮めた。弱点とされた成美、明倫地区を中心に政策を訴えるチラシを繰り返し配布。関係が薄かった労組にも接触を試みた。強固な後援組織をフル稼働し、細野豪志衆院議員(静岡5区)の支援を受けた。
 「やれることはやった」(込山陣営)。それでも票が伸びなかった事実は、町内に残る込山氏への強い“アレルギー”の表れでもある。町議会は込山氏の政治姿勢に批判的な議員が増えた。ふるさと納税で増加した基金残高は近年大きく減少し、町政関係者の一人は「以前のような積極投資は難しい」とこぼす。選挙期間中に訴えた税収を増やす仕組みづくりが重要になる。
 「町民一人一人に喜んでいただける明るい元気な町をつくる」。町内約6600戸を訪ねて町民の声を聞いたという込山氏は、当選確定直後のあいさつで決意した。二度の戦いで二分した町に一体感をもたらす調整力や政治力が求められる。(統一地方選取材班)

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