自然の中で「ととのう」 テントサウナ、浜松・天竜区で人気 “熱波師”登場、楽しさ満載【しずおかアウトドアファン】
ここ数年、人気が高まっているサウナ。浴場や専門の施設だけでなく、屋外での入り方も広まり、愛好者の裾野拡大に一役買っている。今回特集するのは、自然の中で楽しむテントサウナ。極上の「ととのう」体験とはいかに―。
(生活報道部・草茅出)
「サウナに入り熱くなった状態で冷たい川に入ると、体がぎゅっと引き締まるようで気持ちいい。定期的に通っています」。浜松市天竜区の山あいを流れる阿多古川のそばにある「サウナ天竜」を訪れた磐田市の八木雅子さん(40)は笑顔を見せた。
サウナ天竜は、バーベキューなどを楽しめる観光駐車場「TAKI駐車場」(天竜区上野)の一角にテントサウナを4基設置している。まきストーブをたいた熱で、中は汗が噴き出してくる高温。サウナを飛び出せば、目の前の阿多古川まで徒歩30秒だ。代表の鈴木達也さん(40)によると、豊かな自然に引かれ、県内だけでなく愛知県や関東からも客が訪れるという。
「ととのう」ための基本は、①サウナに入る②冷水浴をする③外気に当たって休憩する―をセットで行うこと。サウナ天竜では、テントサウナ内のストーブ上に置かれた石に水をかけ、蒸気を発生させる「ロウリュ」、室内の熱い蒸気を送る「アウフグース」を行う“熱波師”の「あつあつ君」によるパフォーマンス、シラカバの枝の束で体をたたくなどして血行を促すウィスキングなど、サウナをより深く楽しむ体験も満載。利用客同士で打ち解け、テント内は和気あいあいとした雰囲気だ。
静岡県内にはテントサウナの製造を手がける企業もある。自動車部品メーカーのエイケン工業(御前崎市)は、2022年に「ガレージサウナ」を発売した。ポリエステルなどを使ったテント幕と鉄製の骨組み、ステンレス鋼板製のストーブなどがセットになっている。窓がついた開放感のある室内でまきストーブをたき、ゆったりと過ごすことができる。ロウリュなどに使えるひしゃくなど付属品の開発も進んでいる。
天竜区の宿泊施設「ヴィラ阿多古」は22年からガレージサウナを設置し、利用した宿泊客から好評を得ているという。エイケン工業の鈴木大成開発部長(51)は「日本で販売されているテントサウナは、ほとんどが海外企業の製品。ユーザーの意見を踏まえてさらに改良を重ね、国産サウナをPRしたい」と意気込む。
静岡ならでは お茶とコラボ 島田 ロウリュで香りも堪能
静岡県ならではのサウナの楽しみ方を模索する動きもある。2月に島田市の市野外活動センター山の家で開かれた、お茶とアウトドアを組み合わせたイベント「御茶火和[おちゃびより]」に登場したのは「お茶ロウリュ」。会場に設置したテントサウナや、たる型をした木製のバレルサウナで堪能してもらう趣向で愛好者の人気を集めた。
緑茶や紅茶、ほうじ茶を用意した。来場者がタイミングを見計らってサウナ内の石にかけると蒸気が立ち上り、茶の種類によって異なる香りがサウナ室内いっぱいに広がった。来場した平松雄介さん(43)=藤枝市=は「茶の香りが心地よい。出る汗も通常のサウナよりさらっとした感じ」と満足した様子で話した。
イベントは島田市初倉地区の茶農家らでつくるグループや県茶業会議所などが協力して開催。グループの宮村智久さん(43)は「お茶をもっと気軽に楽しんでもらえるようにしたい」と語った。