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テーマ : 浜松市

弁護団「勝訴の流れ加速」 国に控訴断念要請へ 強制不妊、静岡も違憲

 旧優生保護法(1948~96年)に基づく強制不妊手術を憲法違反と認め、国に賠償を命じた24日の静岡地裁判決を受け、原告の弁護団は静岡市葵区で記者会見を開いた。大橋昭夫団長は「原告の苦しみを理解した判決だと評価したい。きっぱりと国の優生思想を断罪したことは、(一連の訴訟で)勝訴の流れを加速させる」と期待を込めた。

判決後、手話で原告の女性の思いを伝える県聴覚障害者強制不妊手術調査委員会の伊藤行夫特別調査委員長(左)。「自分も赤ちゃんを授かりたかった、と」=24日午後、静岡市葵区
判決後、手話で原告の女性の思いを伝える県聴覚障害者強制不妊手術調査委員会の伊藤行夫特別調査委員長(左)。「自分も赤ちゃんを授かりたかった、と」=24日午後、静岡市葵区

 聴覚に障害のある県内の女性は2019年、静岡地裁に国を提訴した。前年、県聴覚障害者協会の小倉健太郎事務局長や前田智子事務局次長が被害実態調査で初めて面会。「国に賠償を求める裁判を起こすことができる」と伝えたが、女性はすぐにはのみ込めない様子だった。以後、30回以上対面する中で少しずつ被害を自覚し始めたという。女性と弁護団をつなぐ役割を担った前田さんは「とてもうれしいが、至極当然の判決」と冷静に受け止めた。
 同協会などで組織する県聴覚障害者強制不妊手術調査委員会の伊藤行夫特別調査委員長は、女性が「赤ちゃんを抱っこしている人を見ると、自分も授かり、ほおずりをしたかった」と吐露していたと振り返った。
 一連の訴訟で国への賠償命令は4例目。損害額の1650万円はこれまでで最大という。全国優生保護法被害弁護団の新里宏二共同代表は「来週にも厚生労働省へ行き、控訴しないよう強く求めたい」と述べた。
 不妊手術を強いられ、国に損害賠償を求める訴訟を地裁浜松支部に起こした浜松市の視覚障害者武藤千重子さん(74)は弁護団を通じ「勇気づけられた。私の裁判にも良い影響が出てくれたら」とコメントした。国に対し「どうしてこのような法律をつくったのか検証して、同じ被害者を出さないでほしい」と求めた。(社会部・佐藤章弘、浜松総局・柿田史雄)

 旧優生保護法訴訟 静岡地裁判決要旨
 旧優生保護法下での強制不妊手術を巡る、24日の静岡地裁判決の要旨は次の通り。
 【主文】
 国は原告に対し、1650万円を支払え。
 【旧法の違憲性】
 旧法に基づく優生手術は、憲法13条により保障された幸福追求権としての子を産むか否かについて意思決定をする自由を侵害し、憲法13条に反する。旧法は差別的な思想に基づいて不合理な取り扱いをするもので、憲法14条が定める法の下の平等に反する。
 原告に対する手術は、当時の厚生相が自らの注意義務に違反して優生手術を推進する政策を実施した結果として行われた。国には国家賠償法上の違法性が認められる。
 【除斥期間について】
 民法の損害賠償請求権の除斥期間は1990年10月ごろに経過した。しかし、原告は優生手術を強いられた事実を知ることができなかったという事実関係の下では、除斥期間の効果を制限するのが相当で、損害賠償請求権が消滅したということはできない。

 

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