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テーマ : 静岡県内金融機関

「フェンシングのまち」沼津 徐々に浸透 一般市民の理解が鍵に

 「フェンシングのまち」を掲げ、交流人口拡大による地域活性化と、将来のオリンピック選手育成を進める沼津市。行政主導で始まった取り組みは地元企業など民間レベルにも徐々に浸透している。9月には同市で全日本選手権が初開催され、全国へ発信する好機。一方で課題は一般市民への浸透度で、将来の世界大会誘致に向け成果を拡充させる必要がある。

フェンシング全国大会で活躍した選手ら。強化策の成果が出ている=15日、沼津市役所
フェンシング全国大会で活躍した選手ら。強化策の成果が出ている=15日、沼津市役所
スマートフェンシングを体験する講習会参加者。フェンシング普及の担い手となる=19日、沼津市の「F3BASE」
スマートフェンシングを体験する講習会参加者。フェンシング普及の担い手となる=19日、沼津市の「F3BASE」
フェンシング全国大会で活躍した選手ら。強化策の成果が出ている=15日、沼津市役所
スマートフェンシングを体験する講習会参加者。フェンシング普及の担い手となる=19日、沼津市の「F3BASE」


 「ゲーム感覚でできそう」「これなら子供やお年寄りも楽しめる」。19日、同市大手町のフェンシングの拠点施設「F3BASE」。スポンジ状の棒を剣に見立てて戦うスマートフェンシングの講習会が開かれた。市とフェンシングのまち沼津推進協議会と、気軽にできるスマートフェンシングの普及を図ろうと機材を開発し全国で活動する大日本印刷(東京)が共催した。フェンシングとは無縁の教諭や会社員ら10人ほどが参加し、楽しみながら学んだ。

 ■学校や企業へ
 近年市内の学校や企業、地域でスマートフェンシングの体験の機会が増加。地元のイベントで取り入れるため、講習に臨んだ人もいた。市と協議会はフェンシングに関心を持ってもらうきっかけにと想定。今後も講習会を重ね、指導者育成を加速させる。
 講師を務めた大日本印刷社員で国際審判員の天利哲也さん(38)は「沼津の取り組みはピカイチ。官民連携、行政の本気度、設備など体制が整っている。継続性もあり、申し分ない」と指摘する。

 ■次世代の育成
 市と協議会は「プラウド ヌマヅ フェンサー」と称した強化選手を独自に指定し、5年後のロサンゼルスオリンピックでの金メダリスト輩出を目指している。地元から5人を選出して集中指導。フィジカルやメンタル、食生活、英会話と内容は幅広い。シドニーとアテネオリンピックに出場した長良将司コーチ(市ウィズスポーツ課)が中心になって取り組む。
 今夏の全国中学生選手権(全中)とインターハイでは、市内のフェンシングクラブなどに所属する選手が躍進した。全中は木村莉緒(3年、女子フルーレ準優勝)と鈴木輝愛(同、女子サーブル3位)、長良樹(1年、男子サーブル3位)の各選手が好成績を収め、団体は沼津FCの女子(全5人)が2年連続の3位。インターハイは岡田彩良選手(加藤学園暁秀2年)が女子サーブル3位となった。
 今回の入賞者のうち、強化選手は鈴木、長良、岡田の3選手。長良コーチは「結果は出てきている」と手応えを強調する。

 ■進む地方拠点化
 7月の世界選手権(イタリア)では、男子フルーレ団体が初の金メダルを獲得し、江村美咲選手も女子サーブル2連覇を果たすなど日本勢の活躍が際立った。男子フルーレ団体は大会直前まで「F3BASE」で合宿を行い、大一番に備えた。江村選手も沼津で合宿経験がある。設備が充分の「F3BASE」の存在、宿泊するホテルが駅と「F3BASE」の至近に立地し、選手の負担軽減と練習に集中できる環境にある。代表クラスの選手が訪れる機会は増えるとみられ、長良コーチは「次世代にとっては良い刺激」と効果を挙げる。
 2019年に市と日本フェンシング協会が包括連携協定を締結して以降、同市で各世代や地区別の全国規模の大会開催が続く。9月の全日本選手権では、公式ホームページに同市が舞台の人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン‼」とコラボしたイラストでPRしている。

 ■後押し不可欠
 地域貢献の観点からも地元企業の理解は広がる一方、一般市民の理解が今後の課題だ。20年に発足した協議会の会員は毎年20前後ずつ増え、現在は69の団体・個人。地元に本社や支社(支店)を置く企業が主体で、25年までに100にまで増やす計画という。
 将来、世界大会開催を目指すとしているが、市民の後押しと盛り上がりが不可欠。協議会の杉沢教人会長は目に見える形でフェンシングによる波及効果を示す必要性を指摘し、「まだ沼津イコールフェンシングにはなっていない。全日本選手権を機に盛り上がり、来年のパリオリンピックに代表選手を送り込めれば」と期待する。
 (東部総局・高橋和之)  66年前国体会場が契機  沼津市とフェンシングのつながりは1957年、国体のフェンシング会場が沼津西高に決まったことで加速。これを契機に市内高校に部活動が発足し、現在では県内でも例がない複数のクラブチームによる活動につながっている。
 地元企業も有望選手を採用してサポート。鈴木穂波(ネッツトヨタ静岡)と脇田樹魅(沼津信用金庫)の両選手は地元企業に在籍しながら、小中学校でのフェンシング教室で講師も担う。
 3月には香陵アリーナ(市総合体育館)がオープンした。練習などを行う「F3BASE」とともに設備面が充実しつつある。

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