テーマ : 経済しずおか

YSKへのTOB成立 いなば食品傘下で再生へ

 焼津水産化学工業(YSK)は27日、静岡市清水区の食品メーカーいなば食品が100%出資する特別目的会社の株式公開買い付け(TOB)が成立したと発表した。東証スタンダードの上場を廃止し、いなば食品の完全子会社として経営再建を図る。YSKの株式非公開化は、アクティビスト(物言う株主)ファンドの介入で一度は不成立になる曲折を経た。

インタビューに答える焼津水産化学工業の山田潤社長=27日午後、静岡市内
インタビューに答える焼津水産化学工業の山田潤社長=27日午後、静岡市内

 YSKの山田潤社長は同日、静岡新聞社のインタビューに応じ、「最適なパートナーであり、非常に心強い」と話し、いなば食品の稲葉敦央社長は「YSKの企業価値向上に努める」とコメントした。買収資金は約164億5千万円とみられる。
 TOBに応募した株式数は約1005万株で発行済み総数の87・86%。成立要件である発行済み総数の60・00%を上回った。買い付け価格は1438円だった。
 YSKは市場規模の縮小や原材料価格の高騰などで事業環境が悪化し、大胆な経営改革に向け「より速やかな意思決定をしやすい」(同社幹部)株式非公開化の道を模索。昨年8月に東京の投資会社によるTOBを実施した。
 ところがアクティビストファンドがYSK株を大量購入して株価が買い付け価格を上回る事態に陥り、不成立に。その後、従前から取引関係にあるいなば食品との間で2度目のTOBに向けた協議を行い、同社が買収に名乗りを上げた。今回もアクティビストの買い増しがあったが、買い付け価格を引き上げ、成立につなげた。
 (経済部・河村英之)
「成長戦略にシナジー期待」 焼津水産化学工業 山田潤社長に聞く  焼津水産化学工業の山田潤社長(47)の一問一答は次の通り。
 -いなば食品の子会社となるメリットは。
 「非常にスピード感があり、海外展開も積極的な企業。その理解とバックアップを得ながら事業拡大を進めたい。当社が描く海外展開、国内事業強化、新分野創出の成長戦略につながり、シナジー効果を期待できる。長期的な利益を主眼に置いたTOBである」
 -事業環境の厳しさが増し、2022年5月に策定した中期経営計画を昨年見直した。
 「海外展開は工場建設まで至っていないが、現地で委託製造する段階にある。非上場化により、まずは27年3月期目標の売上高150億円を1年でも早く達成することが使命だ」
 -1回目のTOBの反省点は。
 「われわれの企業価値をうまく打ち出せなかった。日々変化する市場とのコミュニケーションが足りなかった」
 -今後の経営体制をどう考えるか。
 「事業や株式市場の環境が変化する中で企業発展のため大胆な経営改革を進めれば、株主に迷惑がかかる面があると判断してTOBに踏み切った。ただ、ESG(環境・社会・企業統治)の取り組みは変わらない。ステークホルダー(利害関係者)が最小化されて事業と社員に集中しやすくなるが、ESGを基本に、身の丈に合った経営体質を心がける。若手人材の確保にも注力する」

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