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【経済サプリ】賃上げ原資を確保する方法(翁百合/日本総合研究所理事長)

 今年の春季労使交渉は予想以上の賃金上昇となっている。3月にはマイナス金利も解除され、日本経済も新しいステージへと変わりつつある。日本経済の今後の大きな問題は、人手不足の深刻化だが、これを日本経済の変革をさらに進める機会ととらえ、潜在成長率向上につなげる必要がある。株式市場では既往ピークの株高となっているが、その背景には日本企業の変革に対する内外投資家の期待もある。
 今後日本で必要なのは成長と分配の好循環、すなわち企業の成長を持続的な賃金上昇につなげることである。そのためには、規模を問わず各企業が経営力を上げて、人への投資等によって付加価値生産性を上げ、賃上げ原資を確保することが求められる。
 賃上げ原資を確保するには、二つのやり方がある。第一は、既存の商品やサービスの価格転嫁実現。昨年7月で価格転嫁できている中小企業が約75%に上昇したとの調査もあるが、さらに広げる必要がある。第二は、高付加価値の商品やサービスの構成比率を上げ、その価値に見合う価格付けをすること。これを商品ミックスの改善というが、そのためにはビジネスモデルの改革が欠かせない。
 すなわち、人、デジタル、知的財産への地道な投資とこれらを製品化やサービスに結びつける緻密な戦略が必要だ。これらにより新たなビジネスモデルへ変革を続ける努力こそが、賃上げ原資を確保し、優秀な人材を惹(ひ)きつける道であろう。
 そのためには、企業の取締役会でビジネスモデル変革に向けた議論を重ね、投資家や銀行も経営者と対話を重ね、経営者の取り組みを後押しし、支援する必要がある。また政府も、新たなビジネスモデルを開拓する事業再構築やM&Aなどを阻む制度や慣習があれば、これを洗い出して見直し、企業の取り組みを支援することが求められる。

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