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【新茶特集】​世界に挑む気鋭のママ 岩崎恭三商店(静岡)の麻須美社長

 男性中心の茶業界に、未経験かつ子育てをしながら飛び込んだ女性がいる。静岡市葵区の茶問屋岩崎恭三商店の2代目岩崎麻須美さん(30)。約3年前に家業を引き継いだ。従来の仲卸業に加え、自社ブランドを設立。昨年度は海外市場にも進出し、既存手法にとらわれない茶の販売を模索している。自社ブランド「お茶と、暮らしと」の商品を紹介する岩崎恭三商店の岩崎麻須美社長=2日、静岡市葵区
 高校卒業後、浜松市で医療事務に就いていた岩崎さん。出産を機に実家へ戻る相談をした際に、父恭三さんから事業継承を打診された。幼子を抱えながらの挑戦に不安はあったが、「実家のお茶屋を残したい」と引き受けた。
 就任直後、「従来通りの売り方ではいけない」との思いから、茶と菓子、茶器などをギフト販売する「お茶と、暮らしと」を立ち上げた。自身を「丁寧な暮らしをしている人に憧れる、雑な人」と自嘲する岩崎さん。ただ、子育てと家事、仕事に追われる同じ境遇の女性は多いと考えた。コンセプトやパッケージデザインが受け、30~40代の女性客が増えていった。
 ブランドが軌道に乗り始めたころ、あることに気が付いた。「私、茶商なのにお茶のことを何も知らない」。日本茶インストラクターの資格取得を決意。子どもを寝かしつけてから連日深夜まで試験勉強に打ち込み、見事合格した。
 海外での需要拡大を受け、昨年度は海外市場の開拓を始めた。有機栽培の本山茶を商材に、産地や生産者のストーリーも売りにする。砂糖で絵画を制作するシュガーアーティストの作品をパッケージに採用し、アートと茶の架橋も試みる。
 今後はシンガポールやマレーシアを中心に販路を広げていく計画。岩崎さんは「暮らしの中に茶がある喜びを、若い世代や海外に伝えていきたい」と語る。

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