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テーマ : 裁判しずおか

血痕の色巡り応酬 袴田さん再審 公判ヤマ場に【最後の砦 刑事司法と再審】

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審第9回公判が15日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であった。犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕の色を巡り、検察側は「長期間みそ漬けされた血痕の赤みが残る可能性がある」と改めて主張した。弁護団は「抽象的な可能性を指摘しているに過ぎず、赤みが残ることが『間違いない』と立証されたとは言えない」と批判し、赤みが残る5点の衣類は「捏造(ねつぞう)を示している」と訴えた。

「5点の衣類」の一つ、ステテコ。約1年2カ月みそに漬かっていたとされるが、血痕には赤みが見て取れ、生地も白っぽさが残る(弁護団提供)
「5点の衣類」の一つ、ステテコ。約1年2カ月みそに漬かっていたとされるが、血痕には赤みが見て取れ、生地も白っぽさが残る(弁護団提供)

 最大の焦点となっている血痕の色変化について、弁護団と検察側が同じ日に主張・立証するのは初めてで、審理はヤマ場を迎えた。
 シャツやステテコなど5点の衣類は、事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかり、血痕には赤みが残っていた。袴田さんの再審開始を認めた2023年の東京高裁決定は、弁護団の鑑定や弁護団と検察側双方の実験を踏まえ、1年以上みそ漬けにされた衣類の血痕の赤みは消失することが化学的に推測できると判断。これらの証拠が確定審で提出されていれば「(袴田さんが)有罪だとの判断に達していなかった」と結論づけ、衣類は捏造された可能性が「極めて高い」とも踏み込んだ。
 再審でも有罪立証を維持する検察側は今回の公判で、久留米大の神田芳郎教授ら法医学者7人による共同鑑定書などを新証拠として用意。冒頭陳述で、血痕の色合いは観察条件に左右されるとした上で、弁護団の鑑定について「化学反応の進行を阻害する要因の影響・程度を具体的に検討していない」などと述べた。衣類が犯行着衣だと指し示す「さまざまな証拠がある」として「みそ漬け血痕に赤みが残る可能性があれば、犯行着衣であることは否定されない」とも主張した。
 弁護団は、共同鑑定書への反論を展開した。弁護団の鑑定を手がけ、再審開始の判断を維持する高裁の決定を導いた旭川医科大の清水恵子教授らの「(共同鑑定は)仮説の実証が行われておらず、希望的観測にとどまる」とする反論書などに基づき、みそタンク内には血痕の赤みが消えるのに十分な酸素があったことや清水教授らの鑑定結果が揺るがないことを強調した。
 地裁は同日、法医学者ら5人を証人として採用し、3月25~27日に尋問することを決めた。新たな公判期日として4月17、24日と5月22日の3日間を指定。5月で結審するとみられ、大詰めの段階に入っていく。

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