レモン香る島に 熱海市初島、新名物へ始動 静岡県内唯一の有人島【わたしの街から】
オブジェや料理も
富士急グループが初島の東部で運営するリゾート施設「PICA初島」内のアジアンガーデン。南国の雰囲気を感じさせる建物の入場ゲートをくぐると、レモンの巨大オブジェが目に飛び込んできた。高さは取材記者の背丈よりも数センチ大きい1・8メートル。題名は「おっきなレモン隕石(いんせき)」だそうだ。
一見、異様な巨大オブジェ。だが、澄んだ冬の青空を背景にすると意外にも写真映えし、実際、スマホを手に記念撮影を楽しむ観光客が見られた。このほか施設周辺にはレモン色のポストが立っていたり、「檸門(れもん)」と題した黄色いドアがあったりする。いずれも交流サイト(SNS)への写真投稿がじわりと拡散している。
明治期に訪日した外国人がレモンの種を熱海にまいたのが、発祥の地のゆえんという。熱海高やJAなどが熱海産レモンの普及活動に力を入れている。この動きに共鳴した富士急グループが今夏、新たな名物としてレモンのPRを開始した。アジアンガーデンのレストランでは、熱海高生と共同開発したレモン入りの「初島バーガー」のほか、レモンスカッシュ、レモンカレーを提供している。
観光、生活支える定期船 熱海港から30分
相模灘に浮かぶ初島は、火山由来の伊豆諸島とは異なり、海底の隆起で形成された「海成段丘」の島とされる。周囲4キロ、面0.44平方キロで、137世帯197人(11月末現在)の島民が暮らしている。
生活、観光の両面で重要な役割を果たしているのが、富士急マリンリゾートの定期船だ。熱海-初島港間を30分で結ぶ。熱海港からは観光客と一緒に、島民の生活用品や郵便物が運ばれる。天候が良ければ、熱海市街地と富士山の景色を船上から楽しめる。
初島には名所旧跡が点在する。らせん階段の付いた初島灯台は国内に16基しかない参観灯台の一つ。江戸城に使われた石の採取跡が海岸沿いに残り、初島小・中の校舎前には作詞家の阿久悠が手がけた校歌の碑が建つ。古くから歌人や作家にも愛され、与謝野晶子が「初島紀行」、林芙美子が「うず潮」で取り上げた。
海の幸もふんだん 初島港近くの食堂街は漁師直営の飲食店が並ぶ。海の幸を堪能したいのであれば、海鮮丼がおすすめだ。来年2月10日~3月11日には恒例の食イベント「初島丼合戦」が開かれる。
食堂街にある活魚料理店「さかや」は旬の魚介類を乗せた「うみ丼」を売りにする。店を訪ねた12月中旬に丼を飾ったネタは、サザエ、メジナ、カンパチなど8種ほど。中でもサザエは格別で、磯の香りとほのかな甘みが口に広がった。
前回の初島丼合戦は食堂街の13店舗が「キンメの煮付け丼」「あぶり丼」「山かけ丼」「ちらし丼」など自慢の一杯を出した。今回はどのような海鮮丼が登場するのか。食券は年明け以降、熱海-初島港間の往復乗船券とセット販売する。
問い合わせは富士急マリンリゾート<電0557(81)0541>へ。
(熱海支局・鈴木文之)