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遊休地解消へ農業法人誘致 静岡県、35市町など推進連絡会 温暖な気候、交通利便性PR

 静岡県と35市町、県農業振興公社などが農業法人誘致に向けた推進連絡会を立ち上げ、本格的な活動を始めた。全国的に生産者の高齢化と後継者不足が課題になる一方、規模を拡大する農業法人は増えている。温暖な気候や交通アクセスの良さなどをアピールして誘致を進め、遊休農地解消と地域活性化につなげる。

裾野市に進出し、キャベツの苗を定植する黒岩農事の黒岩和敏社長=2月下旬、同市
裾野市に進出し、キャベツの苗を定植する黒岩農事の黒岩和敏社長=2月下旬、同市


 群馬県嬬恋村の農業法人「黒岩農事」は昨年12月から、眼前に富士山がそびえる裾野市須山地区でキャベツ栽培を始めた。芝畑だった遊休農地約1万7千平方メートルを借り受け、5月の初出荷を目指して苗の定植を進める。
 雪に覆われる高原の嬬恋村は冬から初夏にかけてキャベツを収穫できないため、温暖な土地を探していたところ、推進連絡会が誘致に熱心な同市を紹介した。黒岩和敏社長(41)は「裾野市に適した品種を見定め、100ヘクタール(100万平方メートル)規模に広げたい」と意気込む。将来的には同市での新規雇用を検討するという。
 推進連絡会は昨年5月に発足した。同社は初の誘致事例で、レタスを生産する山梨県の農業法人も焼津市への進出が決まった。県によると、2社に加えて、現在19法人と話し合いを進めているという。
 高い平均気温と日照量の多さ、適度な降水量に恵まれ、米や野菜、茶、果樹、花など多種多様な農産物を誇る静岡県だが、離農は深刻化している。担い手となる農業経営体数はこの10年で約35%減少。県によると、後継者が不在または未定の農地は約9600万平方メートルに上り、遊休農地対策は待ったなしの課題だ。
 進出を検討する農業法人と、受け入れ先となる市町をつなぐ推進連絡会にはJAグループや金融機関も参画し、情報を広く共有する。関連イベントに参加して誘致を呼びかけるとともに、今後は農業法人と市町の担当者らが一堂に会する「合同企業ガイダンス」のような催しを企画していくという。
 県農業ビジネス課の笹野努課長は「静岡県は大消費地に近いという地の利もある。既存農家の規模拡大と農業法人の誘致を両輪で推進していきたい」と話す。
 (東部総局・杉山諭)

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