テーマ : 経済しずおか

コラム窓辺 卒業シーズン(水野裕央/日本銀行静岡支店長)

 カーラジオから卒業ソングが流れてくる季節になった。雪化粧の富士山が日本人の心のよりどころだからか、駿河湾の水平線の向こうに未来を感じるからか、卒業ソングは静岡のドライブに良く似合う。
 卒業ソングは、生きてきた時代により異なるだろう。先輩方は、荒井由実さんの「卒業写真」や海援隊さんの「贈る言葉」だろうか。後輩方は、レミオロメンさんの「3月9日」、アンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓 十五の君へ~」、川嶋あいさんの「旅立ちの日に…」だろうか。
 私は、卒業生にすてきな歌詞のような心に響く言葉は贈れないが、自分が共感したことは伝えられる。米アップルの共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏が2005年にスタンフォード大学の卒業式で行った有名なスピーチである。
 同氏のスピーチのポイントは、①自分の興味のままに受けた講義で得た知識がパソコンの設計に役立った経験から、今の経験が将来に役立つことがある②解雇後に再挑戦できたのは、素晴らしい仕事と心底思えることを探し見つけ、信念を持ってやり続けたから③ガン宣告時を振り返り、人生の時間は限られているため、自分の心と直感に従う勇気を持って生きることが大切―の3点に私なりに整理できる。ネット記事などで一度読んでもらいたい。
 特に、最後の死生観は、人を普段無意識に縛りつけるプライド、不安、慣行などが全く無意味であることを気づかせてくれ、前を向く、挑戦をする勇気を与えてくれる。
 卒業生の皆さんが、新たな環境で充実した日々を過ごされることを願いつつ、卒業おめでとう。
(水野裕央=みずのひろお/日本銀行静岡支店長)

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