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サクラエビ「人工養殖技術確立が必要」 静岡大でシンポ、海洋環境の研究報告【サクラエビ異変】

 静岡大サステナビリティセンターは21日、静岡市駿河区の同大で公開シンポジウム「サクラエビの不漁どこまで明らか―駿河湾の海洋環境と生態系を探る」(由比港漁協など後援)を開いた。科学者らは海洋での実測データを持ち寄り、サクラエビに影響を与えうる海洋環境について多面的に討論。同センターの鈴木利幸特任助教(生物学)は最近の資源回復傾向と人工養殖技術の確立の必要性について発表した。

駿河湾産サクラエビの不漁問題について講演する静岡大サステナビリティセンターの鈴木利幸特任助教=21日午後、静岡市駿河区の静岡大
駿河湾産サクラエビの不漁問題について講演する静岡大サステナビリティセンターの鈴木利幸特任助教=21日午後、静岡市駿河区の静岡大

 静岡新聞社「サクラエビ異変」取材班と連携する「サクラエビ再生のための専門家による研究会」の研究者ら10人程度が参加。座長を務める鈴木款同大特任教授が今年2月に発表した「サクラエビ資源再生のための科学的政策提言」に基づき、不漁の仮説の実証を行っていることを報告した。
 「サクラエビ群集解析と人工ふ化実験」と題して講演した鈴木特任助教は2020~21年に魚体の大きさなどの調査を行った結果、小型化は起きず、稚エビが多く育っていることを報告。「資源再生のため人工養殖技術が貢献できる」と述べ、第一歩として来年度に幼生の生息環境を調査することを明かした。
 宮原淳一同漁協組合長も講演した。「これまでの不漁は2年続けば回復した。現在の不漁は3年以上に及び、海の環境変化が原因では」と述べた。
 「サクラエビ幼生への濁りの影響」と題して講演した荒川久幸東京海洋大教授は、無機粒子が卵のふ化や幼生の成育を阻害するとの水槽実験結果を発表した。近年強い濁水が指摘される富士川沖で連続的に濁度を計測する必要性を訴えた。
 このほか、シンポジウムでは観測史上2番目の長さとなっている黒潮大蛇行による影響の考察や、植物プランクトンの成長に必要な栄養塩の鉛直分布調査結果の発表があった。
 (「サクラエビ異変」取材班)

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