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富士川、共同で水質調査 静岡と山梨両県が覚書 ポリマー汚泥残留の可能性受け

 採石業者による不法投棄で富士川水系に高分子凝集剤入り汚泥(ポリマー汚泥)が残留している可能性が高いとの東京海洋大研究室と静岡新聞社の分析実験を受け、静岡と山梨両県は27日、水質や堆積物の調査などを共同実施する覚書を交わした。静岡県庁で川勝平太、長崎幸太郎の両知事が署名し、流域環境復元に向けた連携を確認した。

富士川水系の流域環境復元に向け覚書を交わす川勝平太知事(左)と長崎幸太郎知事=27日午前10時40分ごろ、静岡県庁
富士川水系の流域環境復元に向け覚書を交わす川勝平太知事(左)と長崎幸太郎知事=27日午前10時40分ごろ、静岡県庁

 両県によると、河川水と堆積物をそれぞれ調査する。河川水の調査は、7月下旬から雨畑川や早川などの支流を含む富士川水系11地点(静岡県内5地点、山梨県内6地点)で各200ミリリットル程度を採取する。高分子凝集剤に含まれるアクリルアミドポリマー(AAP)が変化してできる劇物アクリルアミドモノマー(AAM)や、人の健康に関する水質基準が設けられた26項目の有害物質を調べる。静岡県環境衛生科学研究所などが分析する。
 堆積物調査は、汚泥から凝集剤成分を検出する方法が確立されていないとして、秋ごろをめどに委託した専門業者の計画に基づき着手するとしている。ただ、汚泥の調査地点の選定には至っていない。川勝知事は「もとの美しい河川環境に戻すため現状を把握したい」と強調。長崎知事は「オープンな場で調査し、科学的に評価する」と述べた。
 一方で、調査はAAPに比べて検出が難しいAAMをターゲットとしていることや採取する水の量が少ないことから疑問を呈する専門家もいる。
 (「サクラエビ異変」取材班)

 ■中立性に疑問符
 静岡新聞社が2019年6月に富士川水系の河川内に高分子凝集剤入りとみられる汚泥が残留していることを指摘して以降、静岡、山梨両県は、凝集剤や汚泥の問題を2年以上見過ごしてきた。覚書はようやく重い腰を上げた節目と言える。
 ただ、凝集剤による富士川の汚染をめぐって責任を問われる可能性がある当事者の両県が、調査でどう中立性を保つのかは疑問だ。山梨県の長崎知事は覚書署名後、「(今回の調査に)万が一にも変な疑念が入り込む余地すらなくしたい」と述べたが、具体策は示されていない。
 静岡新聞社と東京海洋大研究室が汚泥中の存在を確かめたAAPに比べ、検出が極めて難しいAAMを同水系11地点のわずか各200ミリリットルの水で調べるとする方針や、凝集剤に含まれる可能性のあるPAC(ポリ塩化アルミニウム)や魚毒性が極めて高いとされるポリアミンなどを調査対象としていない点も、調査の意図が透けて見える。
 安易な“安全宣言”につながらないか精査する必要がある。

 

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