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事業化 高いハードル 三菱重工 撤退1年

 経済産業省が民間企業による次世代旅客機の開発支援を打ち出した。約半世紀ぶりの国産旅客機を目指した三菱重工業のスペースジェット(旧MRJ)は、ノウハウ不足で商業運航に必要な「型式証明」を取得できず、1兆円の投資が負担となり、約1年前に撤退した。経産省は、複数社による開発で悲願の国産機に再挑戦する構えだが、事業化へのハードルは極めて高い。
 300万点の部品が使われる航空機は産業の裾野が広く、完成機が国内で造れれば地方への波及効果が高い。スペースジェットの開発では、各地の中小企業が航空機産業への参入を目指した。
 航空機開発の最大の難関は型式証明の取得だ。スペースジェットは巨大市場の米国で、当局の承認が得られるレベルには達しなかった。三菱重工の泉沢清次社長は昨年2月、撤退を表明した会見で「民間機の型式証明プロセスの理解が不足していた」と話した。航空機開発は、米ボーイングと欧州エアバスが拠点を置く欧米の当局がルールを決める現実もある。
 航空機開発には強いリーダーシップも必要だ。三菱重工は多くの部品メーカーを巻き込んで機体を造る経験が乏しく、スペースジェットは開発延期を繰り返した。戦後唯一の国産旅客機であるプロペラ機「YS11」は、現在の三菱重工や川崎重工業などが資金や人材を出したが「寄り合い所帯」による意思決定の遅れなどで事業は軌道に乗らなかった。

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