テーマ : 経済しずおか

IT人材 都市部に偏在 自治体が育成 技術者確保へ 地域経済活性化の起爆剤に

 IT人材の不足が深刻になる中、自治体主導の人材育成が活発だ。高度な技術を持つ人材は都市部の企業に偏在し、地方の企業は確保が難しい。自治体が自ら育成の場を提供することで、優秀なIT技術者を確保し、地域経済活性化の起爆剤にしたい考えだ。

香川県が実施する「かがわコーディングブートキャンプ」を受講する参加者(同県提供)
香川県が実施する「かがわコーディングブートキャンプ」を受講する参加者(同県提供)


 短期集中
 香川県は2020年から東京のIT企業と共同で、アプリなどの開発に必要なプログラミング技術を、600時間の短期集中で習得できる「かがわコーディングブートキャンプ」を実施している。
 県によると、未経験者も含めこれまでに約80人が参加した。他業種からリスキリング(学び直し)として受講する社会人もおり、プログラムを終えると県内で起業したり、地元企業のIT関連の職場で活躍したりしているという。
 経済産業省の推計では、IT人材は30年に全国で約79万人が不足するという。デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展や人工知能(AI)の普及で人材の獲得競争は過熱しており、優秀な人材の採用は、好条件を掲げる都市部の企業が有利になることが多い。政府の資料によると、IT人材の約6割は首都圏に集中しており、地方では不足が特に深刻だ。

 海外連携
 IT先進国と自治体が提携する動きもある。奈良県宇陀市は、北欧のエストニアとタッグを組んだ育成策を始めた。同国で自動運転やロボット開発を手がけるベンチャー企業「クレボン」と連携。日本人留学生が現地の大学でロボット工学などを学べるカリキュラムを25年に新設する予定だ。
 エストニアは、国を挙げたIT化に取り組んでおり、欧州屈指のスタートアップ(新興企業)大国として知られる。宇陀市が現地に留学の受け皿を設けることで、地域経済を活性化できる人材の育成を図る狙いだ。帰国後の雇用先を確保するために、市はクレボンや関連施設の誘致も目指している。
 金剛一智市長は「過疎地域では、待ちの姿勢では人材は減少するばかりだ。世界に通用する人材が育ち、人口減少や労働力不足などの課題解決につながれば」と抱負を語った。

いい茶0

経済しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞