テーマ : 動物・ペット

猫の幸せ願い保護活動 服部優二さん(浜松市東区)【君がいるから】

 「元気なうちに、パートナーの茶トラに会わせてやりたい」。ケージの中に横たわる保護猫「翔平」に目をやりながら、浜松市東区で猫の保護活動を行う任意団体「浜松ねこシェルター」を運営する服部優二さん(60)はそうつぶやいた。翔平の顔の右半分は大きく腫れて血がにじみ、目のありかも分からない。

シェルターでくつろぐ保護猫たち。仲が良くけんかもない
シェルターでくつろぐ保護猫たち。仲が良くけんかもない
1年前に保護した雄猫「スガキヤ」を抱く服部優二さん。当初は衰弱し、触られることを拒否した=5月中旬、浜松市東区
1年前に保護した雄猫「スガキヤ」を抱く服部優二さん。当初は衰弱し、触られることを拒否した=5月中旬、浜松市東区
今春保護した子猫。春先以降は子猫の保護依頼が急増する
今春保護した子猫。春先以降は子猫の保護依頼が急増する
シェルターでくつろぐ保護猫たち。仲が良くけんかもない
1年前に保護した雄猫「スガキヤ」を抱く服部優二さん。当初は衰弱し、触られることを拒否した=5月中旬、浜松市東区
今春保護した子猫。春先以降は子猫の保護依頼が急増する


 今年4月に「大けがをした野良猫がいる。捕まえてもらえたら面倒を見たい」との依頼を受け、市内で保護した。診察の結果は「扁平上皮がん」。重い病気と知った依頼者は「世話は無理」と前言を翻した。分子標的薬を使った治療が効いているものの、1回の治療にかかる費用は多い時で5万~6万円。クラウドファンディングで資金を集めつつ、「生きる糧になるはず」と保護直前まで傍らにいた茶トラを捜す。
 服部さんにとって、猫は「いとしい」と同時に「哀れ」な存在だ。「翔平のような猫を引き取ってくれる人はおそらくいないだろう。人の都合でかわいがられたり、かわいがられなくなったり。昨日までご飯があったのに、急に飢えたりするのは哀れだ」
 保護活動は、建築設計会社の経営との二足のわらじ。布団製造販売会社やハウスメーカーでの勤務を経て20年ほど前に独立した。ペットとは無縁の生活をしてきたが、独立から数年後、小学1年生だった長男が、自宅近くの神社に捨てられていた子猫をアパートの物陰にかくまって世話したことが転機になった。
 発覚後、妻の春代さん(54)に「元の場所に戻してきなさい」と諭された長男は火が付いたように怒った。「何でだよ。死んじゃうだろ、くそばばあ」。日頃は発しない激しい言葉。心を動かされ、子猫を家に迎えた。数年後にはペット店で売れ残っていた犬も加わった。犬猫について調べると、野良犬はほとんど見かけなくなった一方で、野良猫は取り残されていると思えた。

 野良猫を保護して飼い主を探す活動を始め、既に20年以上。春先からはあちこちで生まれる子猫の保護依頼がひっきりなしで、会社の事務所2階と自宅で世話する猫は現在、160匹以上にもなる。
 猫との出合いは仕事にも影響した。3年ほど前から事業の柱として「猫や犬とともに暮らす家づくり」を提案。ペットと暮らしやすい生活空間を作るための住宅リフォームや、新築の設計施工を手がけている。
 猫の保護にあたっては、検査や処置の費用として依頼主に1匹当たり3万円の負担を求めるが、保護期間が長くなればまかない切れない。春代さんと事務所スタッフ、数人のボランティアが協力し、本業の利益で何とか活動を維持する。「収益事業とセットでなければ活動は続かない。そこも含めた保護活動のモデルが必要」と痛感している。
 活動の基準は「目の前の猫の幸せ」。年間50匹という決して多くない譲渡実績は、引き取り先を慎重に審査した結果だ。「単にかわいいと思うことと、本質的な愛情は違う」。見栄えやかわいさが重視されることに抵抗もある。不幸な猫をなくすために、人と猫はどんな関係を築くべきか、自問を続けている。

いい茶0

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