テーマ : 動物・ペット

飼い主利用し目的達成(細川博昭/作家)【鳥のいる暮らし⑫完】

 ケージ外で遊ぶ放鳥時間。隣の部屋に好きな人間がいて、遊んでもらいたいと思っている時も、オカメインコはそれぞれが異なる判断をする。隣と隔てるふすまが数センチだけ開いていた場合、長老格のアル(雄)はふすまの手前で地上に降り、歩いて隣室に移動した。そこに体をねじ込める隙間があれば隣に行けると考えた。安全策である。

当たり前のように人間を利用するオカメインコ。自身が有利になるよう駆け引きもする
当たり前のように人間を利用するオカメインコ。自身が有利になるよう駆け引きもする

 アルの8カ月後に迎えたメイ(雄)は、うちの誰より小柄でスリム。彼は自分の飛行術に絶対の自信を持っていたので、オカメインコがぎりぎり通れるくらいの隙間でも、通る瞬間だけ翼をぎゅっとたためば自分なら問題なくすり抜けられると判断した。実際、一度もぶつかることなく、彼は隙間を飛び抜けた。
 2羽の雌はまた違う判断をした。最年少の小雪はそこが開くまで無言で待ち続けたが、もう1羽の菜摘は「開けなさい」と言うように叫び、ふすまの開放を要求した。人間がそれに応じると、じっと待っていた小雪と共に歩いてやってきた。
 残る1羽の雄、ルークは、いずれ菜摘の要求に人間が屈することを経験から知っていたので悠々と待ち、開いたところを何食わぬ顔で歩いてくる。ルークは仕事場のスタッフから「漁夫の利男」と呼ばれていた。
 このように、十人十色ならぬ、十羽十色の行動をする。それが鳥だ。鳥の中でもオカメインコが属するオウム類は非常に発達した頭脳を持っている。その脳が、行動の中に見える個性にも大きな影響を与えていた。
 自力では目的が達成できないと判断した時に、「立っているものは飼い主でも使え」という高度な選択ができたことが、オカメインコの生物としての能力の高さを教えてくれていた。やはり鳥はおもしろい。
 (作家)

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