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特別扱いされたい気持ち(細川博昭/作家)【鳥のいる暮らし⑩】

 人間のことが大好きなオカメインコの心には、好きな相手から特別扱いされたい気持ちがある。複数の鳥がいる家庭において、好きな人間の関心が自分だけに向けられている瞬間は優越感にも浸るが、他の誰かが自分よりも優遇されているのを見ると、嫉妬で怒りが湧いてくることがある。

わざと叱られることをするオカメインコ。壁紙を守る段ボールを壊した後
わざと叱られることをするオカメインコ。壁紙を守る段ボールを壊した後

 雌は上手に気を紛らわせることが多いが、気の短い雄の場合、八つ当たり的な攻撃もする。対象は相手の鳥の場合もあれば、人間の場合もある。とはいえ、もともと温和な鳥。相手にけがをさせるようなことは基本的にしない。大抵はくちばしの一突きで気が済んで、後は忘れてしまう。根に持つこともない。
 彼らは、どうしたら好きな人間の関心を自分に向けられるのか考える。その際に参考になるのが過去の経験だ。柱や壁紙や本をかじろうとして飼い主に叱られたことや類似の経験が、多くのインコやオウムにはある。うちのオカメインコも全羽その経験がある。
 オカメインコも犬と同様、叱られたことはわかる。何をすれば飼い主が怒るのかも理解する。ただし、それを悪いこととは理解しない。「自分のある行為に対して飼い主が怒った」という事実のみを学習する。
 叱られているオカメインコは、人間の意図に反し、「飼い主の意識は今、自分だけに向いている」と理解し、それをうれしいと感じる。つまり、叱られるようなことをすると、大好きな人間の意識が自分だけに向くと心に刷り込まれる。
 結果として、これをすると自分だけに強く関心が向くと学習したインコは、叱られることをわざとするようになる。やっかいな状況ではあるが、彼らの心理が分かると、なかなか本気で怒ることができない。
(細川博昭/作家)

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