テーマ : 動物・ペット

初めて見た人懐っこさ【世界一幸せな犬たち②】

 保護犬と譲渡先をサポートするプログラムを始動したのは2013年。京都動物愛護センターの前身である京都市家庭動物相談所で、ドッグトレーナーや専属の獣医師、職員らが一丸となって取り組み始めました。

京都動物愛護センターから引き取られていく保護犬。トレーナーや職員は犬が幸せに暮らせるよう願いながら見送る
京都動物愛護センターから引き取られていく保護犬。トレーナーや職員は犬が幸せに暮らせるよう願いながら見送る

 最初に施設から送り出したのは「リキ」という名の1歳の白い雑種犬です。初めてリキに出合った頃、犬舎には「攻撃的で危険なため殺処分予定」との表示がありました。人の手をかむため首輪すら着けられず、お散歩なんてもってのほか。若いエネルギーを持て余して犬舎で暴れていました。
 犬が人の手をかむのは、人の手が怖いからです。そこで私たちは、ある程度離れた距離から手を見せ、見たらドッグフードを与えるという条件付けのトレーニングを始めました。
 首に触れる、背中をなでる、と段階を踏んで恐怖心を取り除いていくと、リキは次第に人の手をかまなくなりました。首輪を着けてお散歩ができるようになり、暴れることもなくなりました。
 2カ月後、譲り受け希望の女性が現れました。以前も「リキ」という名の白い犬を飼っていて運命を感じたそうで、一目見て決断されました。
 そして、あっという間に引き渡し日に。リキはようやく人に慣れた頃だったので一抹の不安がありましたが、「一緒におうちに帰るで!」と両手を広げた女性の胸にしっぽを振って飛び込んでいきました。体中で喜びを示し、無邪気に甘えるさまはまるで子犬のよう。私は初めて見たリキの人懐っこさに驚き、心配は無用だったと感じました。
 危険な犬として未来を奪われる寸前だったリキ。トレーニングを重ねて自らつかんだ幸せな生活が、いつまでも続くよう願いながら見送りました。
 (山本央子・家庭犬育成指導家)

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