テーマ : 動物・ペット

「乱暴で危険」と返され【世界一幸せな犬たち③】

 私が勤めていた京都市家庭動物相談所(以下相談所)で、雑種犬リキの次に送り出したのは、イタリア語で「おいしい」という意味の「ボーノ」と名付けられた、生後6カ月の雑種犬でした。

ドッグトレーナーとお座りの練習をするボーノ。食いしん坊で、ご褒美のドッグフードが大好き
ドッグトレーナーとお座りの練習をするボーノ。食いしん坊で、ご褒美のドッグフードが大好き

 ボーノは以前相談所から新しい飼い主に引き取られたものの「乱暴で危険」という理由で返された子です。体重は20キロを超え、動きも荒々しいので確かに乱暴そう。しかし、しばらくすると、ボーノは人が恋しくて鳴いていて、本来は人懐っこい犬だと分かりました。犬は本来社会的な動物。他の犬や飼い主といたがるのは自然なことです。
 リードの先で暴れるボーノには、まずリードを引かないよう歩く練習を開始。初めはご褒美のドッグフードを与える際、緊張でボーノの口元に力が入っていたため、私の手からは血が出ていました。それでも根気強く続けると、人と歩けるまでに。ただ、体が大きいボーノの引き取り手はなかなか現れませんでした。
 人が好きなボーノにとって、長い犬舎暮らしはストレスです。約1年がたち、再び乱暴になってきた頃、ようやくある男性が興味を示してくれました。イタリアンレストランのオーナーで、一目ぼれされたそうです。
 私は、外見と違い繊細なボーノの扱い方を丁寧に説明。男性は相談所に通って散歩の練習を重ね、連れて帰られました。
 数カ月後。ボーノに会いに行くと、豪邸の敷地内を走り回っていました。広い犬舎を設置したものの「かわいくて、結局家の中で一緒に暮らしています」と男性。ボーノは「ブラボー!」と褒められてうれしそう。すっかり懐いていました。今度こそ幸せに暮らしてくれますように。そう願いながら、ボーノをゆっくりとなでました。
 (山本央子・家庭犬育成指導家)

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