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テーマ : 経済しずおか

「エネルギーの未来示して」 新電力、燃料高で苦戦 契約打ち切りも企業困惑【参院選しずおか】

 ロシアのウクライナ侵攻などに伴う燃料高で新電力事業者の事業縮小や撤退が相次いでいる影響を受け、新電力から契約を打ち切られる企業が県内でも出始め、困惑が広がっている。各地の工業団地では新電力と契約中の工場も一定数あり、操業への影響を不安視する声も出ている。エネルギーの国際需給は当面好転しないとの見方は根強く、県内の工場経営者らは「国のエネルギー戦略、制度設計が不十分だ」と残り少ない参院選期間での論戦を注視する。

新電力から契約を打ち切られた工場。大手電力に切り替え、節電に努めつつ操業を続ける=8日午後、静岡市内
新電力から契約を打ち切られた工場。大手電力に切り替え、節電に努めつつ操業を続ける=8日午後、静岡市内

 「何とか電力を確保できたが、生きた心地がしなかった」。静岡市内の部品加工の工場経営者は5月末、新電力から契約を打ち切られた。
 「大手電力より安い」との触れ込みで6年前に契約し、単年度契約を重ねてきた。しかし3月に突然「契約は更新しない」と通告された。慌てて他の新電力各社に照会したが、「新規契約は受け付けていない」と全て断られた。契約先が見つからない場合に大手電力から供給を受けられる電気事業法の「最終保障供給制度」の存在を知り、5月に大手電力に申し込んで事なきを得たが、「もし操業できなくなったら」と毎日胃が痛んだ。
 電気料金の高騰で5月は前年同月比で3万円上がったが、新電力より割高な大手に切り替わった6月はさらに10万円上昇した。しかも、現状では最終保障供給制度の適用期間は1年限りで、その先は分からない。経営者は「参院選で議論になっていない。中小企業の命に関わる話なのに」と憤る。
 製造業が集積する磐田市の磐田さぎさか工業団地では、進出約20社の3分の2がそれぞれ新電力と契約する。6月末に満了を迎えた1工場は料金アップを条件に更新できた。ただ今後、他の新電力の出方は不透明だ。
 電力小売り完全自由化から6年。活況だった新電力市場は国際情勢のあおりでしぼみ、地域産業を揺るがす。同団地協同組合の大杉良則専務理事は「エネルギーの安定供給は国の最重要課題。地域経済を守るため、企業が安心して電気を使えるように政治が責任を果たして」と訴える。

 <メモ> 資源エネルギー庁によると、新電力の国内登録数は728社で、全販売電力量に占めるシェアは2021年12月時点で21・7%。一方、21年1月以降に採算悪化で計40社が破産や民事再生、事業撤退に陥った。最終保障供給制度の利用は1万4407件(22年6月15日現在)で、4月末比約2・8倍と急増している。

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