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テーマ : 経済しずおか

山崎製作所 仕事への誇り 意欲引き出す【しずおか企業探訪~経営とD&I~⑨】

 3月に発表された都道府県版ジェンダー・ギャップ指数で、わが静岡県は経済分野で47都道府県中42位でした。詳細を見ると、フルタイムの就業率の男女差はあまりない一方で、賃金の男女差が大きいことが分かります。
 女性の賃金の低さは、管理職にならないために役職手当が支給されないことが原因の一つです。言い換えれば、女性の意欲を引き出せていない職場が多いということでもあります。
 精密板金加工を行う山崎製作所の代表取締役社長・山崎かおりさんは「2009年に父親から会社を引き継いだ頃は、板金加工は底辺の仕事だと思われていた」と振り返ります。「うちの会社にいることが恥ずかしいと社員が言っていた。職人たちの誇りを取り戻していきたいという気持ちが原動力になりました」
 同社が扱うのは単品・短納期の生産財であるため、一般消費者の目に触れる機会がありません。納期と価格だけで評価され、品質が顧客から褒められることもありません。そこで15年に「三代目板金屋」ブランドを創設し、メタルインテリアと女性向けアクセサリーの製造販売を手がけるようになりました。
 ブランドを担当したのは当時20歳だった山崎社長の長女、瑠璃さんでした。「母を助けたいという気持ちももちろんありましたが、それ以上に新しい仕事を自分で作り出すことが楽しかった」と語ります。20代女性は社内では珍しく、戦力と見なされていなかったとのこと。「それが展示会やメディアに出たりする中で、周りの見る目が変わっていきました」
 山崎社長は「背中を見て学べ」が当たり前だった社内コミュニケーションの改善にも着手しました。コミュニケーション研修や朝礼を導入。経営理念を皆で作ったり、「ありがとうカード制度」を設けたりして、チーム意識を醸成していきました。
 三代目板金屋ブランドの認知が上がり、メディア露出も増えたことで、若い入社希望者も増えました。現在は職人の20代が23%、30代が31%、40代が23%、50代以上が23%という構成になっています。
 現在、瑠璃さんは企画営業部チームリーダーとして女性4人のチームをまとめています。「メンバーはみんな仕事が本当に好きで、楽しいし頑張りたいという気持ちが伝わってくる。個々の力を引き出すためにはどんなコミュニケーションをとればいいか、日々考えています」

ポイント
 ・コミュニケーションが組織を変える
 ・仕事の楽しさが人材を育てる

【山崎製作所】静岡市清水区、1970年設立。表面処理、組み立て作業を含めた製品の一貫生産、パーツ部品製作、精密板金加工全般を手がける。2017年に経済産業省の「地域未来牽引[けんいん]企業」に選定、20年に静岡市の「多様な人材の活躍応援事業所大賞」、内閣府の「女性のチャレンジ大賞」を受賞するなど、数々の受賞歴がある。

(国保祥子・静岡県立大経営情報学部准教授)

 こくぼ・あきこ 経営学博士。静岡県立大経営情報学部准教授(組織マネジメント)。企業や官公庁の組織開発プログラムやコンサルティングを手がける「ワークシフト研究所」所長。

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