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テーマ : 経済しずおか

“オール静岡県産ウイスキー”誕生 蒸留所運営の「ガイアフロー」 地元農家とタッグ、品質好評

 静岡市葵区でウイスキー蒸留所を運営する「ガイアフロー」(中村大航社長)はこのほど、主要原材料の大麦や水、酵母などに地元産を採用した“オール静岡県産ウイスキー”を発売した。同社によると、地元産を原材料としたウイスキー製造は国内初。プロジェクトに共感した農家とタッグを組み、業界に新風を吹き込んでいる。

完成した“オール県産ウイスキー”を手に取る中村大航社長(右から2人目)と大麦生産者ら=静岡市葵区
完成した“オール県産ウイスキー”を手に取る中村大航社長(右から2人目)と大麦生産者ら=静岡市葵区

 「念願の地元産ウイスキーができた。大麦を提供してくれる農家さんには頭が下がる思いだ」。中村社長(55)は感慨と感謝を口にした。ラベルは「100%静岡大麦バーボンバレル5年」で、製造は306本と少量。ただ、その希少さと安倍川水系の中軟水で仕込んだ薫り高い味わいが、地元のバーなどで好評を博している。
 2016年に市内初のウイスキー蒸留所として開所した。20年に完成した3年熟成ものを皮切りに製造を進め、今年3月にはシングルモルトウイスキー「静岡ポットスティルW」が世界的な品評会の少量生産部門で最優秀賞を受賞。品質向上と増産体制づくりにも余念がない。
 日本で前例がないオール県産素材のウイスキーづくりは、開所以来の悲願だった。中村社長の夢に共感し、地元で大麦栽培に名乗りを上げたのは、蒸留所近くで建材業を営む山本雅也さん(59)。米作りの経験はあったが、大麦は未知の作物。発芽不良などのトラブルに見舞われながらも、18年に約500キロを収穫し、5年の熟成を経てウイスキーとなった。
 ガイアフローは増産を視野に、県農林技術研究所と共同で原料に適した大麦品種の研究を進めた。研究所の仲介で栽培に関心を示した焼津市の3農家が、19年に栽培を開始。いずれも栽培経験はなかったが、2年目には軌道に乗り始めた。大麦の栽培面積は初年度の計8ヘクタールから15ヘクタールに拡大。小畑幸治さん(67)は「安定的に収穫できれば収益も見込める。今後も規模を拡大したい」と語る。
 焼津産大麦を使ったウイスキーも熟成3年を経て、サンプルとして瓶詰めした。中村社長は「農家との信頼を築き、ウイスキーを通じて静岡の農と自然の豊かさを伝えていきたい」と未来を見据える。
 (経済部・垣内健吾)

業界垣根越えた参入も 静岡県内で製造企業急増
 国内外での需要拡大を見込み、県内でウイスキー製造を始める企業が急増している。国税庁によると、2016年の「ガイアフロー蒸溜(じょうりゅう)所」開所以降、6社が新たに免許を取得し、製造を手がける。
 業界の垣根を越えた参入も相次いでいる。特種東海製紙のグループ会社十山は20年、静岡市葵区井川に「井川蒸溜所」を開所。南アルプスの湧き水や社有林の木材を使ったたる作りなど独自色を打ち出す。今秋には初のシングルモルトを発売予定。担当者は「将来的には県産や国産の大麦を使ったウイスキーも製造したい」と話す。

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