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テーマ : 浜松市

地元担う覚悟 芽生え大きく 佐久間森林組合 本間隆さん【森の守り人 北遠 林業現場から③】

 チェンソーを持つ手に汗がにじむ。浜松市天竜区佐久間町の佐久間森林組合の職員本間隆さん(20)は昨夏、初めて一人で木の切断に挑戦した。新人にとって成長を示す試練。どんな細い木であっても油断はできない。佐久間ダム周辺の現場で緊張しながら雑木と向き合った。チェンソーで切り込んだ溝にくさびを打ち込んだ。思った通りの方向に倒れ落ちた。「ほっとした。ようやく本当の一歩を踏み出せた」

さらなる活躍を目指し、チェンソーの腕を磨く本間隆さん=3月上旬、長野県天龍村
さらなる活躍を目指し、チェンソーの腕を磨く本間隆さん=3月上旬、長野県天龍村

 地元の佐久間に残って働くことを決めたのは高校2年生の時だった。同じ選択をした友人は5人ほど。1月2日に行われた「はたちの集い」で再会した同級生のほとんどは、市中心部か県外に身を移していた。
 10代の頃に一時は海上保安官を夢見ていたが、地元のために働く先輩の姿に影響を受けた。本間さんが所属していた野球部には部OBである先輩が度々練習の指導に訪れていた。
 就職先を考えた時、林業が真っ先に浮かんだ。浦川小、佐久間中の課外授業には森林組合の職員が度々訪れ、森林や林業に触れる機会があった。授業を通じて山に入り、森を人の手で管理する必要があることを理解していた。「佐久間は無数の山に囲まれている。仕事の候補としてすぐに思いついた」と振り返る。
 現在は公共事業の分野を担当し、道路や送電線などの障害となる雑木の処理に汗を流している。「佐久間の森林を守り、地域に貢献したい」と地域活性化への思いを強める日々だ。大石幸弘組合長(70)は「宝物のような存在。『チェンソーは5年やって一人前』と言われ、林業に関する技術を一通り覚えるには時間がかかる。基本を一つ一つ学んでいってほしい」と着実な成長に期待する。
 本間さんの夢は林業が再び盛んになり、佐久間に若い人が集まること。花粉量の少ない品種のスギに植え替えを進める政府の計画に関心を寄せる。「数十年後に佐久間の森林はどんな姿をしているだろう」。想像に期待を込める。
 昨年、組合主催のイベントで地元の小中学生に林業の魅力を紹介した。山へ入り、子どもたちと枝を切る体験を楽しんだ。学ぶ立場だった自分が、教える立場になった。「山を守り、地域を守っている意識がある。大切な仕事であることを子どもたちに知ってほしい」。成長株のまなざしは力強い。

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