あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 浜松市

緑の世界へ 豊かさ求め転職 天竜T.S.ドライシステム協同組合 弓場雅己さん【森の守り人 北遠 林業現場から②】

 浜松市天竜区水窪町の製材工場。ヒノキやスギの爽やかな香りが広がる。職人かたぎの鋭い視線を木材に向けていたのは、弓場雅己さん(58)=同市浜名区=。身長を優に超える長さの木材を次々とフォークリフトで運び、専用の機械で表面や大きさを整える。作業を経て光沢がつき、出荷先の希望に合わせたサイズに生まれ変わる。「仕上がりの美しさには、いつも感動する」。自然に囲まれた職場で日々胸を躍らせている。

56歳で林業の世界に飛び込んだ弓場雅己さん=2月中旬、浜松市天竜区水窪町
56歳で林業の世界に飛び込んだ弓場雅己さん=2月中旬、浜松市天竜区水窪町

 弓場さんは2年前、56歳で林業の門をたたいた。市内の高校を卒業した後、機械の設計を扱う会社に入社した。デスクワークが中心で、設計図を書く日々を送った。仕事は忙しく、終業が夜の11時を過ぎることも度々あった。
 転職を決意したのは3人の娘の子育てが一段落した頃だった。体力があるうちにと思い、定年よりも前に退職。興味があった1次産業で働くことを選んだ。「生活を豊かにすることが転職の動機だった。健康に生きることを第一に考えるようになった」と振り返る。
 現在の職場である製材業「天竜T.S.ドライシステム協同組合」=同市天竜区水窪町=の求人はハローワークで見つけた。木材を自然乾燥で仕上げ、建築用の柱や構造材などに加工する。木材は県内に限らず東京、名古屋などにも出荷されていく。天竜の木が日本中で求められている―。興味が湧いた。
 40年近く屋内で働いてきたが、現在は森林と向き合い、爽やかな木の香りが広がる空間で汗を流す。弓場さんは「とてもやりがいを感じている。木をもっと知りたい」と話す。
 給与面では前職より大幅に下がったが、満足感を得られている。妻も同じ職場で働き、近くで支えてくれている。
 林野庁によると、林業従事者の平均年齢は最新の統計で52・1歳(2020年)。生涯現役の従事者もいる。50代で林業に初めて入る人も珍しくないという。
 北遠の山々には、70歳を過ぎてなお、チェンソーを使い、巨木を切り倒すベテランがいる。弓場さんは「僕よりも年上の方々がたくさんいる世界。先輩たちのような活躍を目指したい。木の種類や状態の見極めがまだまだ。もっと詳しくなって腕を磨きたい」と意欲満々だ。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

浜松市の記事一覧

他の追っかけを読む