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テーマ : 経済しずおか

ミドリムシ培養 健康産業創出に期待 静大・浜医など産学連携

 静岡大と浜松医科大、通信機器製造のシステック(浜松市北区)が、産学連携でミドリムシの培養研究に取り組み、新産業を創出するプロジェクトを進めている。雑菌が混入しない閉鎖型の培養装置を開発し、この装置を製造販売する静大発ベンチャー「浜松バイオチェスト」を28日に設立した。地域で採れたミドリムシを培養して食品に加工するなど、地産地消を通じた健康分野への展開が期待される。

LEDライトを照射してミドリムシを培養する装置=7月中旬、浜松市北区新都田
LEDライトを照射してミドリムシを培養する装置=7月中旬、浜松市北区新都田
ミドリムシ
ミドリムシ
LEDライトを照射してミドリムシを培養する装置=7月中旬、浜松市北区新都田
ミドリムシ

 ミドリムシは植物性、動物性それぞれの栄養素を豊富に持つ微細藻類。細胞壁がないため、人が食品として体内に取り入れた時の吸収率が高く、天然の完全栄養食として注目が高まっている。現在は高価な装置での小規模な培養や屋外での大量培養が主流で、商品化の際には加熱滅菌して粉末に加工するのが一般的とされる。
 プロジェクトは、密閉空間で微細藻類を培養できる安価な装置の開発を目的に2017年に始まった。ミドリムシ培養の研究知見を持つ静岡大が、培養方法や装置開発の観点でシステックを支援。健康分野への応用を視野に入れる浜松医科大も参入し、ミドリムシの探索、分離、純化処理などを担った。
 システックは、浜松市内の菓子メーカーなどの協力を受け、菓子廃液や酒かすを利用した培養液での培養実験を進めた。高価な生化学培地と同等の培養結果が得られ、費用を抑えることに成功した。装置では培養液にミドリムシを入れ、植物用LEDライトを照射して培養する。雑菌の混入がないため、粉末加工せずに液体やジュレ状のまま食品に加工できるという。
 浜松バイオチェストは、地域の企業や団体が自ら食品廃棄物を活用して地元産のミドリムシを培養し、地域で消費する循環を目指す。梶村武志社長は「微細藻類は枯渇しない天然資源。工業や化学の分野でも役立つ。地域産業の発展につなげていきたい」と言葉に力を込める。

 ■「閉鎖型」機器で高速培養 廃棄物の有効活用可能
 プロジェクトのメンバーで静岡大工学部の佐野吉彦准教授(機械工学)は、閉鎖型の培養装置の特徴について「菓子廃液や酒かすなどの高栄養価の培養液を使うことができ、培養速度を速められる」と強調する。
 一般的な培養の場合、栄養価の高い培養液では雑菌も同時に増殖する恐れがあるという。閉鎖型の培養方法を採用することで、食品廃棄物を活用した高効率の培養と雑菌の増殖防止を両立させた。廃棄物の有効活用はSDGsへの貢献にもつながる。
 佐野准教授は「安価な装置で誰でも手軽に微細藻類を培養できるようになれば、日本、世界の人々の健康増進に寄与できる可能性がある」と期待する。

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