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国内初の経口中絶薬 「女性の選択肢広がる」 緊急対応や価格に懸念【大型サイド】

 厚生労働省の医薬品第1部会が国内初の経口妊娠中絶薬の製造販売承認を了承し、同省が2月末まで意見公募をしている。薬事分科会で3月にも正式に承認される可能性があり、現場の医師や当事者は「女性の選択肢が広がる」として心身の負担軽減を期待。ただ、服用後の緊急対応や、薬の価格設定がどうなるか懸念する声もある。

女性ライフクリニック理事長で産婦人科医の対馬ルリ子さん=1月、東京都中央区
女性ライフクリニック理事長で産婦人科医の対馬ルリ子さん=1月、東京都中央区
2種類の錠剤を組み合わせて服用する経口妊娠中絶薬「メフィーゴパック」(ラインファーマ提供)
2種類の錠剤を組み合わせて服用する経口妊娠中絶薬「メフィーゴパック」(ラインファーマ提供)
厚労省の担当者(左)に意見を述べる「性と健康を考える女性専門家の会」のメンバーら=13日午後、国会
厚労省の担当者(左)に意見を述べる「性と健康を考える女性専門家の会」のメンバーら=13日午後、国会
女性ライフクリニック理事長で産婦人科医の対馬ルリ子さん=1月、東京都中央区
2種類の錠剤を組み合わせて服用する経口妊娠中絶薬「メフィーゴパック」(ラインファーマ提供)
厚労省の担当者(左)に意見を述べる「性と健康を考える女性専門家の会」のメンバーら=13日午後、国会

 安全と情報提供
 「服薬は世界保健機関(WHO)も推奨している安全な中絶方法。日本での承認は遅すぎる」。女性ライフクリニック(東京)理事長で産婦人科医の対馬ルリ子さんは、オランダを視察した経験も踏まえて話す。現地では中絶が全額公費負担で、患者には、人生設計や避妊についてのカウンセリングも丁寧に行われていたという。
 それに対し日本の中絶は手術が一般的で、子宮内の胎のうなどを金属製器具を使ってかき出す「掻爬法」と、管で吸い出す「吸引法」がある。掻爬法はWHOが2012年発表の指針で「時代遅れ」とした手法だ。
 対馬さんは「望まない妊娠をしても安全に中絶できること。そして希望した時にまた妊娠できるような正しい情報を患者に提供することが大事だ」と強調した。  診療体制
 経口中絶薬は70カ国以上で使われているとされる。日本で審議が進むのは、英製薬会社ラインファーマが21年に承認申請した「メフィーゴパック」。妊娠9週までを対象とし、まず妊娠継続に必要なホルモンを抑える1剤目を服用し、36~48時間後、子宮を収縮させる2剤目を服用する。国内の臨床試験(治験)では、服用後24時間以内に93%の中絶を確認した。
 「服薬後に帰宅し、胎のうなどの排出がうまくされなかったり、痛みや出血が起きたりした場合の診療体制が課題だ」と指摘するのは日本産婦人科医会の前田津紀夫副会長。厚労省は、当面は緊急時に備え有床医療機関で使用することを条件にする見通しだが、前田副会長は「最初は入院で扱う病院が多いのではないか。有床施設だけでは中絶希望の患者に対応しきれないため、今後、施設間の連携も重要になるだろう」とみる。  アクセス
 日本では、中絶は自由診療のため医師側が価格を設定し、手術費用が十数万円以上になることが多い。「#もっと安全な中絶をアクション」メンバーで自身も中絶経験者の塚原久美さんは「世界で中絶薬の平均卸値は千円程度といわれている。だが日本では、薬も手術費用並みの高額になってしまう可能性がある」と懸念する。
 医師や研究者らでつくる一般社団法人「性と健康を考える女性専門家の会」は13日、自己負担額が高額にならないよう求める要望書を厚労省に提出した。
 薬の価格が高い上、入院も必要となれば、希望に反して日帰り手術を選ぶ人が出かねない。「中絶へのアクセスが妨げられてはいけない」と塚原さんは念を押す。
 中絶に際しては母体保護法で本人と配偶者の同意が必要と規定されており、薬も同様の扱いになるとみられる。この配偶者同意が女性の自己決定権の壁になっているとして、塚原さんは「薬の承認を機に、法の見直しについても議論が盛り上がればいい」としている。

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