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【G7環境相会合】石炭廃止、強まる包囲網 日本、存続へ独自解釈

 イタリア・トリノでの先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は、二酸化炭素(CO2)の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を2035年までに段階的に廃止することで一致した。日本は独自解釈で存続を図る構えだが、脱石炭の包囲網は一層強まった形だ。

石炭火力を巡る主な動き
石炭火力を巡る主な動き

 ▽孤立
 「23年の世界の平均気温は産業革命前から約1・45度高かった」。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で目指す気温の抑制幅の1・5度が間近に迫る状況が3月、世界気象機関(WMO)の報告書で明らかになった。
 石炭火力はCO2の排出が特に多く、国際社会の撤退の流れは明確だ。G7各国では議長国イタリアのほか英国、フランス、ドイツ、カナダが30年までの廃止、米国は利用削減を支持する立場で日本だけが利用に固執し、孤立している。
 気候変動を巡る国際交渉で毎回のように焦点となるのが石炭火力の扱いだ。国際エネルギー機関(IEA)によると、21年の世界の石炭火力発電量は10兆キロワット時と最大の発電方法。日本は3200億キロワット時。21年の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は「段階的削減」、日本が議長国を務めた23年のG7首脳会議では「石炭を含む化石燃料全般の段階的廃止」、同年のCOP28は「化石燃料からの脱却」でそれぞれ合意。今回初めて具体的な廃止年限が入った。
 イタリアの経済紙ソレ24オレによると、意見の相違を埋める担当者間の「秘密工作」が奏功。廃止時期の明記に対して「冷淡な日本を説得した」という。イタリア政府関係者は共同通信の取材に「議長国のイタリアにとって大きな成果だ」と胸を張った。
 だが日本政府関係者は「基本はこれまでと変わらない」と淡々と語り、新たな対応は必要ないと強気の姿勢を崩さない。
 ▽時代遅れ
 環境団体350.orgジャパンの伊与田昌慶さんは、廃止対象となる火力発電について「排出削減対策が講じられていない」という条件が残る点を問題視し「抜け穴だ」と指摘する。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は対策について「CO2を90%以上回収」するものと例示するが明確な定義はない。
 日本政府は燃焼時にCO2を出さないアンモニアを石炭に混ぜる実証段階の技術がこの対策に当たると主張。石炭を段階的にアンモニアに置き換えることで排出削減が見込めるとする。アンモニアは化学肥料の原料などとして世界で広く使われており、製造や輸送に既存技術を活用できることも利点とみる。
 一方、アンモニア製造は多くのCO2が出る手法が主流のため排出削減効果は限定的との批判が強く、国際的に理解が広がっているとは言いがたい。伊与田さんは、国のエネルギー基本計画の見直し議論が近く始まることを踏まえ「計画を大きく見直さないと日本は時代遅れになってしまう」と指摘する。(トリノ、東京共同)

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