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【水俣病発言制止問題】遮られた思い、怒り消えず 「話を聞く気ない」と非難

 水俣病の症状に苦しみ、昨年亡くなった妻への思いを語る言葉は、突然環境省職員によって遮られた。水俣病の患者・被害者団体が、伊藤信太郎環境相との懇談で発言を制止された問題。被害者側の怒りは消えず、国側は7日、謝罪の方針を示した。同省担当者は故意にマイクを切ったと認めながら「これまでと同様の対応」と釈明。懇談参加者は「話を聞く気がないとしか思えない」と非難の声を強めている。

伊藤環境相との懇談で発言する水俣病患者連合の松崎重光副会長(左)=1日、熊本県水俣市
伊藤環境相との懇談で発言する水俣病患者連合の松崎重光副会長(左)=1日、熊本県水俣市
熊本県水俣市で開かれた、水俣病患者らでつくる団体と伊藤環境相の懇談=1日
熊本県水俣市で開かれた、水俣病患者らでつくる団体と伊藤環境相の懇談=1日
伊藤環境相との懇談で発言する水俣病患者連合の松崎重光副会長(左)=1日、熊本県水俣市
熊本県水俣市で開かれた、水俣病患者らでつくる団体と伊藤環境相の懇談=1日

 ▽3分
 「時間なのでまとめてください」。1日、熊本県水俣市で開かれた懇談の場で環境省職員は団体側の発言を遮った。
 語っていたのは水俣病患者連合の松崎重光副会長(82)。妻が昨春「痛いよ痛いよ」と言いながら亡くなったことを切々と話していたが、持ち時間の3分を超えたとしてマイクの音が切られた。他にも同様の対応を受けた団体があった。
 団体側はその場で対応に疑問を呈したが、環境省側は「不手際だった」と釈明を繰り返し、伊藤氏も「マイクを切ったことを認識しておりません」。会場からは「認識できたでしょ」と声が上がった。
 被害者側は7日、「言論を封殺する許されざる暴挙」と抗議。環境省側は謝罪する意思を示したが、一方で「例年(被害者側の)発言が長引くことがあり、昨年は大臣が返答する時間が短く不十分との指摘があったため、事前に(各団体の)持ち時間は3分と伝えた。マイクを切るのは昨年同様の運用」と説明した。
 ▽心構え
 これに対し、「水俣病不知火患者会」の元島市朗事務局長(69)は「これまで発言中に制止されることはあったが、マイクを切られることはなかった」と反論する。
 懇談に参加した「水俣病胎児性小児性患者・家族・支援者の会」の加藤タケ子事務局長(73)は、持ち時間自体を問題視。「水俣病で解決していない問題はまだまだある。1団体3分という時間設定自体が、最初から話を聞く気がないと思わざるを得ない。患者側の声を機械音としか聞いていない」と突き放した。
 長年公害問題に取り組む専門家からも厳しい意見が相次ぐ。熊本学園大の花田昌宣シニア客員教授(社会政策学)は、水俣病の被害拡大を防止しなかった国の責任が最高裁で認められたことを強調。「国は立場をわきまえていない。環境省は被害者に耳を傾けるのが一番の仕事だ」と訴える。
 「制限時間の設定や機械的な打ち切りは、患者側との溝を深めてしまう」。除本理史大阪公立大教授(環境経済学)は、こう批判した上で「環境省は懇談を毎年のルーティンのように考えていたのではないか。加害者側(国)が場のルールを決めるのもおかしな話だ。長期にわたりこじれた問題だからこそ、環境省にはそれ相応の心構えや、丁寧なプロセスが求められる」と強調した。

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