あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 読み応えあり

移民の死にざま 捜索活動に同行【世界の街から】

 肌を射抜く日差しが、体内の水分を枯らす。縦横に伸びるサボテンのとげが、痛みを伴い登山靴にまとわりつく。米西部アリゾナ州アーホ南方の荒野。人道支援団体「バタリオン・サーチ・アンド・レスキュー」が続けてきた移民の捜索活動に同行した。

移民の遺体を捜索するジェームズ・ホールマンさん(左から2人目)ら=2022年10月、米アリゾナ州アーホ南方(共同)
移民の遺体を捜索するジェームズ・ホールマンさん(左から2人目)ら=2022年10月、米アリゾナ州アーホ南方(共同)
移民の捜索活動で見つかった運動靴。付近には白骨もあった=2022年10月、米アリゾナ州アーホ南方(共同)
移民の捜索活動で見つかった運動靴。付近には白骨もあった=2022年10月、米アリゾナ州アーホ南方(共同)
移民の遺体を捜索するジェームズ・ホールマンさん(左から2人目)ら=2022年10月、米アリゾナ州アーホ南方(共同)
移民の捜索活動で見つかった運動靴。付近には白骨もあった=2022年10月、米アリゾナ州アーホ南方(共同)

 メキシコ国境に近い一帯では、不法越境した大勢の移民が命を落としている。出身は中南米の独裁国家や貧しい国が多く、正規の米国の滞在資格は望めない。自らの境遇に絶望し、新天地に夢を託した末に悲劇が待ち受ける。
 ボランティアらと目を凝らし、起伏の激しい地形を進む。移民も生前さまよったはずの現場は過酷だ。炎天下、飲み物のペットボトルは次々と空に。岩場に足を取られ、転倒して手を負傷した。激しい雷雨に襲われ、事故の恐怖にも駆られた。ずぶぬれで地面にうずくまった。
 20キロ近くを踏破する間、風化した白骨が見つかった。少し先には、色あせたピンク色の運動靴。行き倒れになったのは女性だったのだろうか。疲労困憊のまま水も食料も尽き、人知れず息絶える移民の最期に思いをはせた。
 警備強化、受け入れ枠制限、「国境の壁」建設…。押し寄せる移民と世論の悪化を背景に、歴代米政権はさまざまな対策を講じてきた。だが、移民がより危険なルートを選び、犠牲が一層拡大する皮肉も生まれている。
 「私たちが彼らを殺しているんだ」。団体の活動を率い、100人以上の死にざまと向き合ってきたジェームズ・ホールマンさん(57)の言葉が耳に残った。「移民の国」を自任し、一見きらびやかな超大国の闇は深い。(アーホ共同=新冨哲男)

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む