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社説(4月10日)知事選前倒し 県の将来像を競い合え

 任期途中での辞職を表明した川勝平太知事は、当初、静岡県議会6月定例会としていた辞職時期を早め、10日にも県議会議長に辞職願を提出する見通しだ。辞職に伴う次の知事選は5月9日告示、26日投開票で実施される公算が大きい。県民はわずかな期間で、後任の知事を選ばなくてはならない。
 既に元総務官僚が立候補を表明し、複数の政治家の名前も取り沙汰されて選挙戦の可能性が高まっている。突然の知事交代による混乱を早急に収め、新たな県政を円滑にスタートさせるには、有権者が立候補者の資質と政策の適否を見極め、一票を投じることが欠かせない。そのためには短期決戦といえども、立候補者は自分の描く県の将来像をしっかり語り競い合い、有権者に信を問うべきだ。
 4期15年にわたり県政を担った川勝知事だが、新規採用職員への訓示で職業差別と受け取れる発言をし、任期を1年余り残して辞職することになった。責任を投げ出して退く印象が拭えない。
 歯止めの利かない人口減少への対応や、コロナ禍からの回復が遅れている地域経済の振興策など、県政の課題は山積している。これらは簡単に施策の成果が出るようなものではない。10年後、20年後の県の将来像と、その実現に向け任期中にどのような種をまくのか、県民は立候補者の口から聴きたいに違いない。
 一方で物価高騰に苦しむ県民の生活を当面の間、どう支えるかも重要だ。春闘では思い切った賃上げを決めた大手企業が相次いだが、中小企業に波及しなければ国民は生活の改善を実感できまい。中小の多い県内はなおさらだ。厳しい財政状況の下、どのような支援で成果を上げるつもりか示してもらいたい。
 川勝知事と県議会自民党会派の対立による県政の停滞に嫌気が差している県民は多いだろう。新しい知事には、なれ合いでなく、対話によって考え方の違いを乗り越え、施策を前進させられる政治力が求められることは言うまでもない。有権者はこの点も立候補者の主張に耳を傾け、信任できるかどうか見極めたい。
 リニア中央新幹線問題や浜松市の新球場整備など賛否が分かれている懸案が多い。JR東海は2027年リニア開業を断念すると表明したが、川勝知事が言うようにそれが問題の「区切り」になったとは到底思えない。南アルプスの環境保全は議論の途上で、一定の進展があった大井川の水問題も流域の懸念が完全に解消したわけではない。全国的に事業推進への圧力も強まる中で、いかに県民の利益を守って問題を決着させるのか。立候補者はその姿勢を明確にしなければならない。

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