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食品ロス、粉末化で解決 西遠女子学園と浜松の企業 規格外農作物を菓子に

 「粉末化で食品ロスを削減できると発信したい」。浜松市中央区の西遠女子学園中・高インターアクト部の生徒が、売り物にならない「規格外」の農作物を有効活用する取り組みを進めている。地元企業と協力してサツマイモの粉末を活用したスコーンを開発。3月上旬、同市浜名区で開かれたマルシェでの販売にこぎ着けた。

サツマイモの粉末を使用したスコーンを販売する生徒。規格外農作物の有効活用を目指した=3月上旬、浜松市浜名区
サツマイモの粉末を使用したスコーンを販売する生徒。規格外農作物の有効活用を目指した=3月上旬、浜松市浜名区
規格外農産物を粉末状に加工した商品
規格外農産物を粉末状に加工した商品
サツマイモの粉末を使用したスコーンを販売する生徒。規格外農作物の有効活用を目指した=3月上旬、浜松市浜名区
規格外農産物を粉末状に加工した商品


 生徒たちが協力を依頼したのは野菜や果物を乾燥粉砕し、粉末状に加工する技術を持つ同市の農業・食品製造業「ゴールドクラブ」。2022年6月ごろ、同社を紹介するテレビ番組がきっかけになり、部員たちは工場訪問を繰り返すなどして学びを深めた。
 同社ではケールやハクサイ、トマトなど15品目を加工する。所有する農園などで出た規格外農産物を粉末加工し、菓子会社などに卸している。古賀忠取締役部長は「色や形が悪いだけで捨ててしまうのはもったいない」と語り、「SDGs(持続可能な開発目標)が注目される中、社会貢献につなげたい」と話す。
 生徒たちは22、23年の学園祭で、市内のパン製造会社の協力も得てイチゴなどの粉末を使った菓子を販売した。この時は企業が製造した菓子を販売する形だったため、同部の部長米山凜さん(3年)は「自分たちで開発、製造した菓子を販売したい」とさらに意気込んだ。
 部員たちは休日を使って9種類の粉末の試作会を行い、サツマイモのスコーンの製造を決めた。校外での販売になるため、保健所への申請や、その許可を得るためのレンタルキッチンの利用交渉など、主体になって動いた。
 マルシェでは前日に6時間かけて仕込んだスコーン100個が完売した。米山さんは「多くの人が興味を持ってくれてうれしかった」と充実感をにじませた。販売会に顔を出した古賀部長は「小さな取り組みから、食材を大切にする意識が社会に広がっていけば」と期待した。
 (浜松総局・岩下勝哉)

 <メモ>農林水産省の2022年の調査では、全国の主要な野菜41品目の収穫量は約1284万トン、出荷量は約1113万トン。約13%に当たる171万トンが出荷されていなかった。食品ロス削減へ社会の意識が高まる中、廃棄野菜の有効活用に注目が集まっている。
 ゴールドクラブによると農作物を粉末加工しても風味は失われず、栄養価が損なわれることもほとんどないという。一般的な野菜や果物の多くは、8~9割前後が水分。粉末状にすることで輸送コストを大幅に削減し、保存期間を延ばせる。菓子や栄養食品の分野での活用や、食事にかけたり混ぜたりするなど家庭の料理の幅を広げることにも期待がかかる。

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