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テーマ : 経済しずおか

人気アーティスト輩出 制作者の可能性広がる【音楽革新 ボカロ20年㊥】

 ヤマハの歌声合成ソフト「ボーカロイド(ボカロ)」で楽曲制作する人たちを「ボカロプロデューサー(ボカロP)」と呼び、その中から人気シンガー・ソングライター米津玄師や、音楽ユニット「YOASOBI(ヨアソビ)」のAyase(アヤセ)ら有名なアーティストが育った。名古屋市在住のねじ式(本名非公表)もその一人。2013年8月にボカロで制作した「六等星の夜」でニコニコ動画に初投稿した後、毎週火曜に20週連続で投稿して話題を呼んだ。

ボーカロイドを使って楽曲を制作するねじ式=2日、愛知県内
ボーカロイドを使って楽曲を制作するねじ式=2日、愛知県内

 「毎週投稿して、3カ月ぐらいしたらSNSのフォロワーが何千人も増えた。1万再生を超え、面白さとともに(職業としてやっていける)手応えが出てきた」と当時を振り返る。
 07年に発売したボカロ2がバーチャルシンガー「初音ミク」の出現で知名度を高めていくが、ねじ式のボカロPとしての活動開始はその5年以上後のこと。当時はボカロ2のパソコン対応がウィンドウズだけで、自身が持っているマッキントッシュ(マック)は使えなかったことなどが理由だった。
 現在は楽曲づくりによる広告収入や印税、グッズ販売のほか、大学や専門学校でボカロを通じたマネタイズ(現金化)などを指導する講師も務める。「バンドでデビューしようという夢もあった」と話すねじ式のように、ボカロの進化は楽曲制作に携わる人の可能性を広げてきた。
 かつて楽曲を作って販売するには、レコード会社を通す必要があり、評価を受けられる楽曲はほんの一部だった。パソコン1台で楽曲制作ができるボカロが誕生し、インターネットやスマートフォンの普及とともに動画で作品を発表できる環境が整い、作品を見た人から評価を得られる循環は、ボカロの価値観を高めることにつながった。
 ここ数年は高校や大学が授業に導入するなど、教育現場にも進出しているボカロは、音楽文化の発展に寄与している。
 (敬称略)

 <メモ>ボカロ曲を披露するイベントが盛り上がりを見せている。ボカロに関わる全ての人や団体が参加できる「ザ・ボーカロイド・コレクション(ボカコレ)」は、スタートの2020年の投稿は約1600曲の投稿だったが、23年は約1万曲に増えた。話題性や知名度による評価の高まりを避けるため匿名で投稿する「無色透名祭」はスタートの22年が約3千曲で、23年は4800曲だった。

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