あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 経済しずおか

社説(3月5日)日経平均4万円超 実感が伴う成長実現を

 東京株式市場で日経平均株価(225種)が史上初めて4万円を超えた。ただ静岡県民の暮らしの中に、歴史的株高の恩恵を感じられる材料はほとんど見当たらない。国内外の投資家は日本経済がついに長期低迷から脱すると期待しているだけに、企業部門は賃上げや投資積極化といった前向きな支出行動を継続し、実感が伴う成長実現へとつなげたい。
 本県に本社や主要拠点を置く上場企業も、新型コロナウイルス禍収束後の経済活動回復と、外国為替市場の円安ドル高基調を追い風に外需型企業を中心に業績を拡大している。ロシアのウクライナ侵攻後の物価高によるマイナス影響を価格転嫁で吸収する企業も見られる。
 2024年の春闘が本格化した先月、県内でも一部の大手企業が第1回団体交渉で労働組合側の要求額に満額回答するなど、賃上げを加速する動きが見える。株式市場では、賃金と物価がそろって上昇する経済の好循環創出に期待感が高まり、日本経済を長年苦しめたデフレからの脱却に近づきつつあるとの認識も広がっている。
 しかし、実体経済を表す諸指標には芳しくない内容も目立つ。23年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)は物価変動を除く実質で前期比0・1%減、年率換算で0・4%減。物価高が家計を圧迫して個人消費の不振を招き、2四半期連続のマイナス成長となった。
 厚生労働省の毎月勤労統計調査では、物価の影響を加味した23年の実質賃金が前年比2・5%減だった。名目賃金に当たる現金給与総額は1人当たり月平均で1・2%増の32万9859円となったが、物価上昇の勢いに追い付かなかった。23年12月単月の調査で実質賃金の前年同月比マイナスは21カ月続いている。
 長年続いた低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済で、特に家計は支出に極めて慎重になっている。生活実感の向上が先決だ。企業部門は業績好調な上場企業を中心に今こそ、家計に変化を促す十分な賃上げを断行しなくてはならない。
 昨年以上の賃上げを実現するには、生産性の向上が欠かせない。投入する資源で生み出せる成果や付加価値を最大化するビジネス変革を行ってこそ、企業の伸びしろは増す。労働者1人当たりが生み出す生産量や粗利益が増えれば、賃上げの原資を捻出できるだけでなく、少子高齢化で深刻化する労働力不足の解決にも結びつき、生じた余剰人員を成長分野に充てることもできよう。政府には、民間企業の変革の流れを本物にする規制緩和などによる支援を期待したい。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

経済しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む