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社説(3月16日)就活と地方企業 情報開示に積極姿勢を

 2025年春卒業予定の大学生に対する会社説明会やエントリー受け付けなどが解禁され、就職活動が本格的に始まった。3月解禁、6月選考開始、10月内定式という日程は形骸化が指摘されて久しく、既に2月までに3割超の学生が内定を得ているという就職情報会社の調査もある。
 人手不足で今年も企業側の採用意欲は強く、新採スケジュールはさらに早期化傾向とされる。春闘では製造大手の満額回答が相次いだ。人材獲得へ初任給アップに踏み切る社もあり、就活生の心理や行動にどのような変化をもたらすかも注視される。
 引き続き学生優位の「売り手市場」と言われるが、就活生は油断せず、しかし焦らず試練を乗り越えてほしい。確かな情報収集を心がけ、交流サイト(SNS)などの怪しげな情報に惑わされぬよう注意してもらいたい。
 ネット社会になり、企業の採用活動や就活にデジタル技術の出番が増えた。新型コロナウイルス禍ではオンラインの説明会や面接が急速に普及。企業は、情報発信力とともに情報開示への積極姿勢が求められるようになった。応募者減や内定辞退者増が課題の地方企業はなおさらだ。
 就活生が求める情報と企業が発信する情報に齟齬[そご]がないか、学生の目線で点検する必要がある。ホームページに掲載できなくても、人事担当者や若手社員がマンツーマンの場面で質問に誠実かつ丁寧に答え、5年後10年後をイメージできれば学生からの印象は違ってくるはずだ。
 静岡県内企業は新採活動に苦戦している。就職支援財団(静岡市)の調査では24年春入社予定者の採用活動を23年12月時点で継続していた社は43・4%あり、前年同期を3・4ポイント上回った。Uターン就職する若者も減っている。同財団などが事務局を務めるしずおか産学就職連絡会のまとめでは、23年春卒業の県内出身大学生のUターン率は前年比2ポイント減の34%だった。
 県や県内市町は若者のUターン促進策に取り組んでいるが、効果は限定的と言わざるを得ない。住環境や子育て支援策など、これまで以上に若者にとって魅力的な地域づくりを進める必要がある。
 25年卒からは、インターンシップ(就業体験)を採用選考に活用できるようになった。「5日間以上」「大学3年の夏以降」などの要件があり企業側の負担は大きいが、学生との相互理解を深められれば応募者確保、内定辞退防止が期待でき、使い方次第で地方企業の人材獲得の活路になり得よう。学生に参加してよかったと思われるプログラムを作り、さらに参加学生と継続的な人間関係を築けるか、企業の力量が問われる。

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