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テーマ : 経済しずおか

「香り系焼酎」ファン獲得へ バナナ ライチ メロン 開発に熱

 飲みやすさを重視したフルーティーな「香り系焼酎」が若者や女性を中心に人気だ。焼酎業界の売り上げ低迷が続く中、バナナやライチ、メロンといった風味をそろえ、ファンの獲得を目指す。酒造会社は“焼酎ブーム”を生み出そうと開発に熱を入れている。

店内に用意された多様な焼酎を楽しむ人たち=20日、福岡市の「焼酎酒場ANSIC」
店内に用意された多様な焼酎を楽しむ人たち=20日、福岡市の「焼酎酒場ANSIC」
単式蒸留焼酎の国内販売(消費)量推移
単式蒸留焼酎の国内販売(消費)量推移
店内に用意された多様な焼酎を楽しむ人たち=20日、福岡市の「焼酎酒場ANSIC」
単式蒸留焼酎の国内販売(消費)量推移

 「焼酎を飲み慣れていないお客さんにはソーダ割りが好評だ」。福岡市の居酒屋「焼酎酒場ANSIC」の和田慎也店長(47)は指摘する。焼酎は日本酒やワインと異なりさまざまな飲み方ができ、味や香りも変化する。福岡市の20代女性客は「炭酸割りでおいしい焼酎が増えて選ぶのも楽しみの一つ」と話す。
 国税庁によると、本格焼酎と泡盛が分類される単式蒸留焼酎の22年度の国内販売(消費)量は38万5863キロリットル。10年前に比べ20%、15年前から29%それぞれ減った。若者のアルコール離れや嗜好(しこう)多様化によるウイスキーやリキュール類との競合などで減少傾向に歯止めがかからない。
 専門紙「酒販ニュース」によると、本格焼酎メーカーが2023年に「香り系」をうたって発売した焼酎は14商品で過去最多だった。法律上、指定原料以外の香料を使うと本格焼酎の枠から外れるため「香りを生み出すために酵母を工夫した例が多い」と分析する。
 23年は芋焼酎以外にも香り系焼酎への参入が目立った。芋焼酎「黒霧島」を看板にする霧島酒造(宮崎県都城市)は9月、バナナのような果実香が特徴の麦焼酎「霧島ほろる」、メロン風味を楽しめる米焼酎「霧島するる」を販売した。同社が麦・米焼酎の新商品を手がけるのは20年超ぶり。
 琉球泡盛の菊之露酒造(沖縄県宮古島市)も炭酸割りで飲みやすい「菊之露 akari」を6月に売り出した。
 芋焼酎メーカーが麦焼酎や米焼酎に注力する背景には、伝染病「サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)」による原料供給の低迷もある。
 浜田酒造(鹿児島県いちき串木野市)は、独自技術で芋を熟成させライチのような香りがする芋焼酎「だいやめ」を18年に発売。香り系の火付け役だが、23年2月にはスパイスのマーガオを使った麦焼酎「CHILL GREEN」を手がけた。
 「好まれる味は世代で違っても、原料由来の風味でアルコール臭さを減らし、飲みやすくする理論は同じだ」。伝統の長期熟成焼酎「薩摩七夕」が主力の田崎酒造(いちき串木野市)の杜氏(とうじ)野崎充紀さん(54)も香り系人気を肯定的に捉え、愛飲家の増加を期待している。

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