テーマ : 静岡市

先進的教育スーパーサイエンスハイスクール(SSH)静岡県導入20年 科学的知見からテーマ追究 静岡北/3年間で300時間受講 浜松工/成果発信スキル向上

 先進的な科学教育を行う高校を文部科学省が指定する「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」。県内に導入されて本年度で20年を迎えた。指定校を訪ね、どのような教育によりどのような成果が表れたのか探った。

授業での気付きや考察を書き込むデジタル版RACE学習ノート=2月下旬、浜松市中央区の浜松工高
授業での気付きや考察を書き込むデジタル版RACE学習ノート=2月下旬、浜松市中央区の浜松工高
スーパーボールを自作する方法や仮説を発表する梅原明雅さん(右)と遠藤碧海さん(右から2人目)=2月中旬、静岡市葵区の静岡北高
スーパーボールを自作する方法や仮説を発表する梅原明雅さん(右)と遠藤碧海さん(右から2人目)=2月中旬、静岡市葵区の静岡北高
授業での気付きや考察を書き込むデジタル版RACE学習ノート=2月下旬、浜松市中央区の浜松工高
スーパーボールを自作する方法や仮説を発表する梅原明雅さん(右)と遠藤碧海さん(右から2人目)=2月中旬、静岡市葵区の静岡北高

 SSH指定校の静岡北(静岡市葵区)で、2月中旬に開かれた1年生「課題研究」成果発表会。理数科、国際コミュニケーション科、普通科の全480人が探究テーマ選定の動機、目的、仮説を披露した。「身長を伸ばす方法」「全人類に好まれる香りとは」「男と漢の違いとは」。会場には多彩なポスターが並んだ。
 理数科1年の梅原明雅さんと遠藤碧海さんは、ケイ酸ナトリウムとエタノールでスーパーボールを作る方法をテーマに選んだ。ボールを自作できると知った2人は実験方法を調べ、比率の仮説を立てた。「強くてよく跳ねるボールを作ってみたい」と声をそろえる。
 同校SSHの授業「課題研究」では、1年が個人で探究したいテーマを探す。2、3年は関心の近い生徒でグループを作ってより深く探究するテーマを決め、研究機関の訪問や研究者の講座などで知見を深めながら課題解決策を実行し、成果を検証する。
 このほか「探究入門」で証拠収集や分析方法を学び、科学と英語の教員がチームティーチングで行う「科学英語」で語学力を養う。学科により異なるものの生徒はおおむね3年間でSSHの授業を300時間以上受講する。国内外の中高生を招いて開く科学技術フォーラムなど、外部交流や成果発信も行った。  同校は2007年度に初めて指定され、本年度が3期目の最終年度。これまで併設する静岡北中を含む生徒の科学探究能力育成、地域向け科学教室の開催、市民団体と連携した自然保護などに取り組んできた。指定以降は理数科の受験生数が6倍に増え、卒業生の理系への進学割合も増えた。
 SSH教育推進の中心を担う高木裕司教諭は「生徒は純粋な関心から見つけたテーマを実験や観察など科学的な知見で研究する。研究に没入すると、生徒の視野はテーマの近接領域まで広がり、いかに社会貢献できるかという使命感も芽生える」と説明する。  浜松市中央区の浜松工は13年度に指定された。専門指導者の下で座学と実習により基礎を固める工業高校の強みに加え、学習プロセスの体系化や成果発信を進めてきた。
 専門教科の授業で科学的知識を実感・分析し、さまざまな問題解決策の着想・評価を行う「RACE学習スパイラル」を実践。夏と冬に研究成果の発表会を開き、全国レベルの発表会にも積極的に参加した。
 同校SSH推進室の山口剛教諭は2期の成果について「学びの体系化と外部評価により研究、考察、発表のスキルが鍛えられた」と語る。
 (教育文化部・鈴木美晴)
県、コーディネーター配置へ  SSHは生徒の科学的探究能力を培い、社会を先導する科学技術人材を育成するのが狙い。指定校は独自カリキュラムの開発や大学・研究機関との連携に取り組み、物品購入や講師招待のための費用支援などを受けられる。
 県内では2023年度、静岡北中・高、浜松工の2校が指定の最終年度を迎えた。このほか清水東、静岡市立の2校は指定期間を過ぎたもののSSH教育を続ける「経過措置校」となっている。いずれも24年度の再指定を目指している。
 県教委は24年度、推進に向けた指導助言や外部連携を担うSSHコーディネーターを新たに配置する。教員として勤務経験がある理数指導経験が豊富な人材を数人、高校や県教委に置く予定。

いい茶0

静岡市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞