「インフラ」ずさん 利用者不信 総務省「経営介入」踏み込む LINEヤフー 行政指導
総務省が5日、通信アプリLINE(ライン)の利用者情報の大量流出で運営会社LINEヤフーを行政指導した。大株主でシステムを依存する韓国IT大手ネイバーと資本関係を見直すよう要求。経営への介入といえる内容で、LINEが社会インフラとして果たす役割も重視して踏み込んだ。情報管理を巡りLINEヤフーへの総務省の指導は合併前を含め3年で3回目とずさんな実態に利用者の不信は募っている。
「情報管理に無責任さがある」「流出には驚かない」-。あるニュースサイトではLINEヤフーを批判するコメントが飛び交った。
行政指導書を受け取りに5日、総務省を訪れた出沢剛社長は「リスク認識が甘いと言われればそうだ」と認めざるを得なかった。
■絶えない問題
LINEヤフーは2023年10月、ネイバーとソフトバンクがともに傘下に置くZホールディングスとLINE、ヤフーが合併して発足した。だが合併以前から情報管理の問題が絶えなかった。
LINEの利用者情報が、業務委託先の中国の関連会社で閲覧できる状態になっていたことが21年3月に発覚。政府の個人情報保護委員会と総務省が4月、相次ぎLINEを行政指導した。
ヤフーも23年8月、総務省から行政指導を受けた。検索サイト「ヤフージャパン」の利用者の位置情報を事前に十分な周知をしないままネイバーに提供していた。
LINEヤフーは今回の問題を受け、ネイバーとの共通システムを、26年末をめどに完全に分離する計画だ。
■いびつな関係
メッセージのやりとりや通話が無料でできるLINEは国内の利用者が約9600万人に上り、行政手続きに使う自治体も多い。台湾やタイなど海外にも広がり内外の利用者は計2億人に迫る。
日本を代表するIT企業に成長したが、現在もネイバーが大株主だ。総務省は行政指導書で、今回の情報流出はネイバーに対し、適切な情報管理を求めることができない「相当な支配関係」によって引き起こされたと指摘。立場の強いネイバーの管理体制をLINEヤフーが監督しなければならない「いびつな関係」(同省担当者)になっていた。同省は5日、ソフトバンクにLINEヤフーへの関与を強めることも要請した。
■ネイバー依存
情報セキュリティーに詳しい森井昌克神戸大教授は、LINEヤフーはネイバーに資本的にも技術的にも依存している面があるとし「国民的な情報インフラを担っているという意識を持ち、セキュリティー対策を実施すべきだ」と話した。