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コラム窓辺 桜の季節、静岡に思いはせ(白井貴子=しらいたかこ/シンガー・ソングライター)

 そろそろ桜の便りが届きそうですね。皆さんは今から約110年前に世界情勢を案じ、私費を投じて桜の苗木を米ワシントンに贈った人をご存じですか?

 その人は北陸出身の化学者高峰譲吉博士。しかも全国から集めた桜を丈夫な苗木に育てたのが、静岡市清水区の興津地区にあった試験場。全国の木々を研究のために育てていた所です。さすが静岡! 富士山の土壌の豊かさは日本の森を育てる力に直結しているんですね。
 私は2011年公開の、譲吉博士の生涯を追った映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」で、主題歌「SAKURA SAKURA 幸せの架け橋」を担当しました。興津に伺い、プロモーション動画の撮影を行ったことを思い出します。
 譲吉博士の時代から1世紀も経過しているというのに、世界は今再び同じ方向に向かいそうな恐ろしさを秘めています。もう一度日本から桜の「フラワーパワー」を届けるべき時だと痛感します。
 桜といえば、私の父は一昨年、南伊豆の桜並木を母の車椅子を押して元気に散歩した翌日に転倒して救急搬送され、3月30日、稲取の美しい海が広がる空へと旅立ちました。柔らかな日差しに両親が桜を見上げた時の和やかな笑顔と譲吉博士が桜に込めた平和への希望に会いに、今年もまた静岡県入りさせていただきます。
 桜の季節、静岡県は私にとってさらに特別な場所になりました。
 (シンガー・ソングライター)

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