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【静岡・消防士殉職火災】現場小隊長の判断は「適正」 元隊員、検証結果に反論

 2022年8月に静岡市葵区呉服町の雑居ビルから出火し、市消防局駿河特別高度救助隊の男性=当時(37)=が殉職した事故を巡り、男性に続いて2番手として現場に入った元消防隊員の男性(31)が6日、記者会見を開いて当時の状況を証言し、「(隊を率いる)小隊長の判断や指示は適正だった」と市の検証結果や懲戒処分に異を唱えた。一方、殉職した男性が行方不明になる直前まで一緒だった元隊員は「1度でも振り返っていれば、助けられたかもしれない」と自身の後悔を口にした。

命綱を使った場合の活動を実演する元消防隊員の男性=6日午後、静岡市役所
命綱を使った場合の活動を実演する元消防隊員の男性=6日午後、静岡市役所

 市の検証結果は隊員同士を命綱で連結せずに煙が充満するビルに進入したことなどが事故につながったと指摘し、その活動を「規範通りでない」「合理的ではない」と評価している。市消防局は2月、基準に反してロープなどの命綱を使わない屋内進入を指示したとして、小隊長を務めた男性職員を懲戒処分にした。
 元隊員の男性は会見で持参した命綱を使って屋内進入する場面を実演し、今回の火災の場合、命綱を使わない方が安全で合理的だったと主張した。ホースや投光器のケーブルにさらに命綱が加わることでその3本が絡まりやすくなったり、隊員同士の身動きが取りにくくなったりするリスクがあるとした。現場では命綱なしでの進入指示や判断を小隊長が行い、「誰もノーとは言っていない」と説明した。
 屋内退出時には、元隊員が殉職した男性の右肩を2回たたき、右手で出口方向を示すジェスチャーを送ったという。男性の表情は確認できなかったが、首を縦に細かく動かし、うなずいている様子だったという。ただ、その後、男性は行方不明となり、退出経路とは反対方向の火点室で発見された。「まさか逆に行くとは本当に予見できなかった。もう少し僕にスキルや知識があれば」と語り、「最後まで自分が近くにいたが、反対方向に行った理由は分からない」と唇をかんだ。
 消防組織に対しては「意見を述べても反映されないなど組織のあり方に問題がある。失敗としっかり向き合って改善するしかない。何度も検証を行い、全国の模範となる組織に生まれ変わってほしい」と求めた。

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