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テーマ : 静岡市

資材高騰 公共工事を直撃 事業費膨張 人手不足が追い打ち 計画見直し 県内相次ぐ【迫る24年問題】

 建設資材や人件費の高騰を受け、静岡県内の公共工事で事業費の膨張や工事の遅れといった影響が広がっている。建設業界の残業規制が厳しくなる「2024年問題」で人手不足はさらに深刻化し、資材価格も高止まりが続く見通し。工事計画の見直しが相次ぎ、市民生活にも影響が及びつつある。

公共工事設計労務単価の推移(全国全職種平均)
公共工事設計労務単価の推移(全国全職種平均)
資材価格の変動状況(建設物価、静岡地区)
資材価格の変動状況(建設物価、静岡地区)
公共工事設計労務単価の推移(全国全職種平均)
資材価格の変動状況(建設物価、静岡地区)

 「当時の試算で370億円。今なら500億円近くになるのではないか」
 7日の県議会建設委員会。浜松市の新野球場計画を巡り、地元選出の委員が多目的ドームの建設費をただした。県が示した概算事業費は22年度にはじいた数字で、直近の建設資材や人件費の高騰分は反映されていない。県の担当者は「浜松市と役割分担や費用負担を決めていきたい」と述べるにとどめた。
 浜松市沿岸部の津波対策として県が整備を進める馬込川河口部の水門。本体と水流を受け止める扉体の工事費は当初より約5億円増の55億円に膨らんだ。JR沼津駅付近鉄道高架事業では全体事業費が約1・3倍の1034億円となり、事業完了も7年程度遅れて41年度にずれ込む。
 伊東市では新図書館の新築工事が入札不調を余儀なくされた。規模縮小を視野に入れ、再設計を実施する方向だ。事業者がより利益率の高い工事を優先する「超売り手市場」が続くことも要因とみる。
 資材価格や人件費の高騰は全国的な課題だ。25年大阪・関西万博の会場建設費が当初想定から大きく上振れし、北海道新幹線の札幌延伸も遅れる見通し。
 コロナ禍で下落傾向にあった建設資材価格は社会経済活動の再開に伴い上昇に転じた。建設物価調査会によると、静岡地区の1月の資材価格はコロナ前の19年2月に比べ、軽油が約1・3倍、生コンクリートが約1・5倍、鉄筋が約1・6倍に上昇した。円安やウクライナ侵攻の長期化で先行きにも不透明感が漂う。
 追い打ちをかけるのが人手不足だ。国や自治体が公共工事費の見積もりに使う労務単価は12年連続で上昇した。4月からは時間外労働の上限規制が適用され、労働力不足に拍車がかかる。
 災害復旧の最前線も担う建設業界。公共工事を請け負う伸栄建設(静岡市)の出雲大俊社長は「賃上げや働き方改革を進めなければ担い手はいなくなってしまう。工期の長期化と費用の増加は避けられない」と指摘する。
 (政治部・森田憲吾)

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