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テーマ : 静岡市

大自在(3月9日)花沢の里

 日ごとに強まる陽光に誘われる形で静岡市と焼津市の境にある満観峰(470メートル)に登った。石垣と板張りの建物が見事な歴史的景観を醸す山村集落「花沢の里」を過ぎ、鞍掛峠まで上がれば山頂は遠くない。
 途中の登山道で先を急ぐ小学生に抜かれた。老若男女でにぎわう山頂で富士山と静岡市街を眺めた後は鞍掛峠に戻り、高草山(501メートル。
 へと登り返す。こちらの山頂からは志太平野が一望できる。
 高草山を南へ下ると花沢城跡の看板が見えた。ここまで来ると人影はまばらになる。案内板によると花沢城は戦国時代の山城。武田信玄の駿河侵攻時、今川の城として最後まで抵抗した。武田軍は城を包囲し、信玄は高草山中腹に陣を構えたとされる。
 一の曲輪[くるわ](本丸)までの遊歩道は険しかったが、高草山からは城全体が丸見えだ。3週間ほど激しい戦いを続けて落城した。籠城[ろうじょう]戦は援軍が来なければ守り抜けない。信玄に駿府を追われて掛川城に逃げ込んだ今川氏真[うじざね]に救援する力は無かった。
 本丸に立つと南西方向がよく見えた。城の目的も西側への備えだったが、信玄は後背の山を越えて攻めてきた。城跡から花沢の里に戻る。その北には日本坂があり古代東海道が安倍川に抜けている。万葉集の歌にも「焼津辺[やきつべ]」「阿倍」という地名が見える。
 日本坂の名も日本武尊[やまとたけるのみこと]の東征に由来するという。現在では人気のハイキングコースが通る花沢の里周辺は昔から往来が盛んな要衝だった。体を動かすつもりで訪れたが、歴史にも触れることができて、得をしたような気分になった。

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